「ソーヴィニヨン・ブラン」というワイン用ぶどう品種をご存知でしょうか?
フランス語で「野生の白」というネーミングを持つほどのたくましい生命力で、「シャルドネ」と並ぶ白ワインのツートップに君臨。フランスが制定したワイン格付けの最上級に唯一例外として登場する「シャトー・オー・ブリオン」の“秘蔵っ子”白ワインもこのぶどうから作られています。
そんなソーヴィニヨン・ブランの魅力を一緒にひも解いてみませんか?ソーヴィニヨン・ブランが好きになる情報満載!です。
ソーヴィニヨン・ブランってどんなぶどう品種?
ソーヴィニヨン・ブランは、もとはと言えば、野性のぶどう品種。
フランスはボルドー地方で自生しているところを発見され、徐々にロワール渓谷のロワール地方へと派生していったと言われていますが、最近の調査によると、ロワール地方が原産地というのが有力になっています。
先祖にはピノノワール、子孫にはカベルネ・ソーヴィニヨンという赤ワイン用ぶどう品種の双璧が存在しているところを見ると、ソーヴィニヨン・ブランはさまざまなぶどう品種の優れた遺伝子を継承し成長した、ワイン用ぶどう品種のサラブレッドと言えるでしょう。
ソーヴィニヨン・ブランの味わいの特徴
①自然界の気持ちよさをたっぷりと味わうワイン
はじけるような小粒の実をぎっしりと身に着けた、比較的小柄な房。そこから生まれるワインの香りは、例えば、摘み立てのハーブのようにさわやかで、柑橘系のフルーツや青リンゴのようにみずみずしくフルーティー。
まるで青い空の下、さまざまな樹木に囲まれた青々と生い茂る草原で思いっきり深呼吸するような、ソーヴィニヨン・ブランの香りは自然界の気持ちよさにあふれています。
その順応性の高さから世界で幅広く栽培されていますので、それぞれのお国柄で少しずつ個性を変えていくのも魅力のひとつですが、さわやかな果実味の向こう側に見え隠れする、さまざまな香りの存在も要チェック!
例えば、チーズの香りやちょっとビターなカラメルの香り。他にもソーヴィニヨン・ブランのワインには、なんともおもしろい香りが潜んでいるのです。
“猫のおしっこ”ってどんな香り?
ソーヴィニヨン・ブランから作られるワインの香りを例える言葉のひとつに“猫のおしっこ”というものがあります。「Pipi de chat」 “ピピ ド シャ”とフランス語で読めば、ちょっと可愛らしい響きなのですが、ワインで猫のおしっこの匂いと言うのはちょっと首をかしげてしまいますネ。
フランスの感性が産み出した独特な表現なのかもしれませんが、この猫のおしっこの香りとは、どこかちょっと香ばしいカラメルのような “熱”の存在を感じさせるソーヴィニヨン・ブラン特有の香りが関係しているように思います。
熱く乾燥した青草やワラの上でただよう通りすがりの猫がしたおしっこの匂い。 ソーヴィニヨン・ブランの香りは、そんな自然界のところどころに存在するさまざまな香りが織りなしているのです。
香りが味わいを連れてくるワイン ソーヴィニヨン・ブランの味わいは、香りのイメージそのままと言っても過言ではないかもしれません。
口に含むと鼻腔いっぱいに広がるさわやかでみずみずしいアロマに導かれ、のどを伝わるまっすぐな果実味。そして、しっかりとした酸味。みずみずしく、いきいきとした酸がストレートなのど越しをより心地良くナビゲートします。
次の章でソーヴィニヨン・ブランの具体的な味わいと楽しみ方について、お好み別に掘り下げてみましょう。
こんなワインが好みの方には是非ソーヴィニヨン・ブランを試して欲しい!
①甘口のデザートワインが大好き!
辛口白ワインの代表ソーヴィニヨン・ブランですが、甘口ワインも作られています。しかも希少な極上もののデザートワインですから、これは見逃せません!そ
れはフランスのボルドー地方、ソーテルヌ地区で醸される「貴腐ワイン」。普段ならただのカビになるだけのボトリヌス・シネリアと呼ばれる病原菌が、稀にみる環境の下で貴腐菌となり、世界三大貴腐ワインのひとつ「ソーテルヌ」を醸しだす。
ここでのソーヴィニヨン・ブランは、蜂蜜のような豊かなボディを持ちつつも香りやメリハリが薄いセミヨンというぶどう品種とブレンドすることにより、その香りと酸味を補うのに欠かせない存在になっています。
華やかでリッチな味わいの貴腐ワインとフォアグラのテリーヌのペアリングは至福の味わいです。
②白ワインをしみじみと味わいたい!
ロワール地方のような冷涼な土地で作られたワインは、フレッシュな酸をまとったさっぱりとした味わいが魅力のひとつですが、時として、酒質の硬い物足りなさの残る味わいになってしまうことも。
そこで、生み出されたのが「シュール・リー」という醸造技術です。発酵が終わると残った澱をすぐに取り除いてしまうのが一般的な白ワインの醸造過程ですが、このシュール・リーは、発酵過程で生まれた酵母のパワーが残る澱の上で醸造し続けることによって、旨味やコク、香りなど、ワインに奥行きを与えます。
一般的には同じく冷涼な土地で栽培される「ミュスカデ」というぶどう品種に使用されることが多い醸造技術ですが、シュール・リーを行ったソーヴィニヨン・ブランもより鮮やかになった柑橘系の香りに加え、身体にしみ渡るような旨味のあるワインに。
しみじみと白ワインの旨味を味わいたい方はぜひ!和食とのペアリングもおすすめです。
③白ワインとスイーツのペアリングを試してみたい!
「ソーヴィニヨン・ブランのワインにとろけるような甘~いスイーツを合わせてみたいけど、さわやかなスイーツしか合わないのかな?」
いえいえ、そんなことはありません。ソーヴィニヨン・ブランにはたくさんのアロマが存在していますので、その中から香りや味わいの要素をピックアップして、スイーツとソーヴィニヨン・ブランの“似た者同士”ペアリングにチャレンジしてみましょう。
例えば、酸味が特徴の軽やかなワインなら、柑橘系の果物やキウイなど、ちょっとすっぱいフルーツをたっぷり使ったジュレにエルダーフラワーのシロップを添えて。
凝縮感のある果実味が印象的なワインなら、りんごを入れてこんがり焼き上げたケーキに濃厚なミルクジャムをトッピング。などなど、お好きなスイーツとワインの共通点を見つけて、幸せなマリアージュを♬
④魚介類を使った料理とのペアリングに目がない!
ソーヴィニヨン・ブランはエビやカニなどの甲殻類と相性がいいと言われます。
エビやカニのおだやかでクリーミーな味わいがソーヴィニヨン・ブランのミルキーさを秘めたさっぱりとした味わいにぴったり。お寿司にも合わせてみたいところです。
ここでもうひとつおすすめしたいのは「イカ」。ハーブを散らしたイカのマリネとのペアリングはいかがでしょう。
ソーヴィニヨン・ブランを混ぜ合わせて酸味をマイルドにしたアップルビネガーに味付けをしたら、ゆでたイカを加えハーブを散らし、仕上げにしょうがのしぼり汁と緑茶をひとふり。おだやかな緑のニュアンスが心地良い、大人の粋なペアリング。エビを餌にするイカのほんのりとしたエビ風味も面白い隠し味です。
産地別に見るソーヴィニヨン・ブラン
ソーヴィニヨン・ブランのワインは、作られる国の個性によっていろんな表情を見せる多彩なワインです。
ここでは、これまでお話してきた内容も交えながら産地別の特徴をおさらいしてみましょう。
①フランスのソーヴィニヨンブラン
まずはロワール地方。
比較的冷涼な気候の下、ロワール川流域に広がるぶどう畑から採れるソーヴィニヨン・ブランは、ハーブやライムなど緑のニュアンスが強く、しっかりとした酸味ときりっとしたミネラルの味わいが特徴の辛口ワインを生み出します。
有名なのは「サンセール」や「プイィ・フュメ」。ふくよかな果実味が口いっぱいに広がるプイィ・フュメは、ロワール地方の中でもひときわおだやか。親しみやすいフレッシュさが魅力です。
次はボルドー地方。冒頭でお話した「シャトー・オー・ブリオン」はこちらボルドー地方のグラーヴ地区で生まれました。ボルドー地方では地区ごとに赤ワインの格付けを制定しており、メドック地区の格付けを決める際にこの「シャトー・オー・ブリオン」をどうしても見過ごすことが出来ず、地区外のワインながら唯一例外的に最上級の1級にランクインさせたという別格のエピソードを持っています。
そのシャトー・オー・ブリオンが格付けの参加を拒否し続けた“秘蔵っ子”白ワインはソーヴィニヨン・ブランがブレンドされ、大輪の花を咲かせています。こちらで栽培されるソーヴィニヨン・ブランも緑のニュアンスが強い若々しい味わいが特徴ですが、貴腐ワイン同様、セミヨンをブレンドし、樽で熟成させたものが多いため、芳醇で堂々とした飲みごたえのあるワインを世に送り出しています。
②ニュージーランドのソーヴィニヨンブラン
今や原産国のフランスを追い越す勢いで人気が高まるニュージーランドのソーヴィニヨン・ブラン。
とりわけ南島のマールボロは日本でも人気の高い銘醸地となっています。 ニュージーランドで作られるソーヴィニヨン・ブランのワインはひとことで言うならばたいへんフルーティー。
ソーヴィニヨン・ブランが持つさっぱりとした品種由来の香りや味わいに加え、滴るようなジューシーさをプラス。それはトロピカルなパッションフルーツにまで到達するほどの果実味です。
全体的に親しみやすい飲み心地のワインは、リーズナブルなものからリッチなものまで価格帯に幅がありますが、コストパフォーマンスの非常に高い一本が手に入る期待大!のニュージーランド産ソーヴィニヨン・ブランです。
③チリのソーヴィニヨンブラン
海風にさらされる土地柄のため、比較的冷涼な風土のチリ。
ここで作られるソーヴィニヨン・ブランは、どちらかと言うとロワール地方の持ち味に近く、いきいきとした果実味が特徴のワインが作られています。
前述したシャトー・オー・ブリオンと同じ格付け1級にランクインしている「シャトー・ムートン・ロートシルト」が手がけるワイナリーも存在し、リーズナブルながら良質のワインを作り出すポテンシャルの高い土地と言えるでしょう。
④アメリカのソーヴィニヨンブラン
どちらかと言うと涼やかな地域を得意とするソーヴィニヨン・ブランですが、太陽の恵みを惜しみなく受けるカリフォルニアのナパバレーでおいしいワインが作られているのも見逃せません。
完熟果実を樽熟成したワインは飲みごたえ十分!他の国ではあまり類を見ない力強い仕上がりです。 他にも南アフリカやオーストラリア、アルゼンチンなど、ニューワールドのワインも要チェック!コストパフォーマンスの高い一本がきっと見つけられますよ。
まとめ
一本筋の通った華のあるワイン、ソーヴィニヨン・ブラン。 いかがでしたでしょうか?
ソーヴィニヨン・ブランの特徴や違い、オススメまで、いろいろとお話させていただきましたが、ソーヴィニヨン・ブランというぶどう品種の多様な可能性を秘めながらも一本筋の通った華のあるおいしさを少しでもお伝え出来たら幸せです。
さっそく味わってみたくなった皆さま。今夜のディナーのお供にいかがですか?