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ドイツワイン

 

ドイツワインと聞くと何を思い浮かべるでしょうか?

白ワイン?甘口ワイン? もしかするとラベルに猫が描かれた青いボトルや、’’マドンナ’’など特定の銘柄を想像する方も多くいらっしゃるかもしれません。 ちょっと甘くて飲みやすいワイン。その爆発的な人気もあってか日本では昔から「ドイツワイン=甘口ワイン」というイメージが強くある印象です。

しかしドイツワインは本当に甘口ワインだけなのでしょうか?

  • 辛口ワインもあるの?
  • 赤ワインはないの?

今回はそんなドイツワインの疑問についてご紹介します。

ドイツワインの特徴

ドイツワイン

国内のぶどう栽培においては紀元前古代ローマ時代にまでさかのぼるほどの長い歴史があるドイツ。フランスよりも北に位置しており、実はぶどう栽培ができる場所のほぼ北限にあたります。 その北限で栽培できる品種は限られるものの厳しい環境を活かした非常にユニークな品種がたくさんあり、逆にそれがドイツワインの強みとなっています。

ドイツワインは甘口が多いの?

ドイツワイン

ドイツでは1700年代後半からすでに’’貴腐ワイン’’と呼ばれる高級甘口白ワインが造られています。 ここでドイツとは切っても切れない関係である’’貴腐ワイン’’について少しご紹介しますね。

’’高級’’甘口ワインになるその理由は、適度な湿度によって発生するボトリティス・シネレアと呼ばれる菌(カビ)にあります。ぶどう果皮にそのカビが付くことで、水分が蒸発しそして糖度が増し、最終的には干しぶどうのようなエキスが凝縮されたぶどうが出来あがります。 そのぶどうを貴腐ぶどうと呼び、貴腐ぶどうからできるワインはとても美しい上品な甘さを持った’’貴腐ワイン’’へと変貌していくのです。 カビの一種なので、収穫のタイミングや気候の少しの変化で、完全に腐ってしまうというリスクがあり生育が容易ではないことから、生産できる地域が限られたり、収穫年(ヴィンテージ)によっては造れないという事態も多く起ります。 適度な雨、適度な日照時間など「環境条件がそろったときにしか出来ない高級ワイン」となるのです。

しかし実は、そんな難しい貴腐ワインは1775年にドイツの有名ワイナリーであるシュロス・ヨハネスブルグで、たまたま通常よりも収穫が遅れたことにより、干しぶどうのようになってしまったという’’偶然’’から生まれました。 それ以降は、「シュロス・ヨハネスブルグの遅摘み法」と呼ばれ、遅摘みで生まれる貴腐ぶどうがドイツで幅広く知られるようになりました。その偶然がなければドイツ=甘口ワインというイメージも存在していなかったかもしれませんね。

またそれと同時に1960年代からの高度経済成長時代には甘口ワインがブームになり、ぶどう畑が大幅に増えたこともドイツ=甘口ワインのイメージを後押しすることになります。 残念ながらそのなかで、「ただ甘ければ価値がある」という違った方向へ向かってしまい、1980年代には低価格の甘口ワインが量産され、ドイツワインのイメージ・信頼性が揺らいでいくことになったのです。

甘口ワインから辛口ワインへ

ドイツ=量産甘口ワインのイメージを覆すべく立ち上がったのが志高い若手醸造家たちです。彼らはドイツの土壌を活かした高品質な辛口ワインを造ることを目指しはじめたのです。 数十年かけ現在では世界でも認められる質の高いリースリングを使った辛口白ワインが造られています。

辛口ワインのことをドイツではトロッケン(Trocken)と呼び、ラベルにも記載されていることが多いのでぜひチェックしてみてください。

ドイツワインに赤はあるの?

そんな白ワインのイメージが強いドイツワインですが、近年とても高品質な辛口の赤ワインも広がりをみせています。増えてきた理由として、1990年代半ばからの世界的な赤ワインブームの影響があります。需要に対応すべく赤ワイン用ぶどうの栽培に力を入れたことで、2016年時点では栽培面積全体の34.1%が赤ワイン用品種が占めています。 またドイツ国内でのワインの消費スタイルも変化し、昔はワイン単独で飲まれていたのが、食事と合わせることが一般的になったことも、白・赤ともに辛口ワインが増えてきた理由でもあります。 実際に辛口ワインの生産量は全体の67.5%(2016年データ)までになっています。生産量の2/3以上が辛口ワインだなんてとっても意外ですよね。

こうしてみると、ドイツは世界の需要によって臨機応変に、熱心にワイン造りに取り組む非常にエネルギッシュな醸造家たちが多く存在する素敵な国と言えますね。

知っておきたい糖度の等級

辛口ワインが増えてきたとはいえ、甘口・半甘口が全体の1/3弱を占めており、甘さ度合に関する法律も存在します。ドイツの甘口ワインに対する想いが伝わりますよね。 法律と聞くと難しく思いますが、用語が分かるとボトルをみればだいたいの甘さが想像できるので知っておいて損はありませんよ。

まず、ドイツワインの最上級カテゴリーは「プレディカーツヴァイン=肩書付き高品質ワイン」と呼ばれており日本でもよく見かけます。その名を許されたワインの中でも、ブドウの糖度によってさらに’’6つの肩書き’’に分けられます。

糖度の低い順からご紹介します。

  1. カビネット(kabinett) ドイツ高級ワインの入口です。熟したぶどうが使われ、辛口がほとんどですが甘口もみられます。
  2. シュペートレーゼ(Spatlese) シュペートはドイツ語で’’遅い’’を意味しています。そのことからも’’遅摘み’’の完熟ぶどうを使用していることが分かります。こちらも辛口、甘口両方造られています。
  3. アウスレーゼ (Auslese) 完熟し、一部貴腐化による凝縮したぶどうが使用されます。ここまでくるとほとんど甘口となります。
  4. ベーレンアウスレーゼ (Beerenauslese) べーレンは’’粒’’を意味していて、過熟ぶどうか貴腐ぶどうの粒を選りすぐって選ばれたものを使用します。極甘口タイプです。
  5. アイスヴァイン (Eiswein) 氷点下7℃以下で凍ったぶどうを使用した極甘口。
  6. トロッケンベーレンアウスレーゼ (Trockenbeerenauslese) 干しぶどう状にしぼんだ貴腐ぶどうを使用した極甘口。

この6つの’’肩書き’’はラベルに書いてあるので、ぜひ一度注意深く見てみてくださいね。 これらはいずれも、次にご紹介する13の特定生産地域で収穫されたぶどうを100%使わなければいけないという規定もあります。

ドイツワイン有名産地

ぶどう栽培ができるほぼ北限に位置するドイツ。それゆえやはりワイン産地はすべてドイツ南部を中心に広がっていて13の生産地域があります。

簡単に代表的な産地の特徴をご紹介します。

ラインヘッセン

ドイツの中では栽培面積・ワイン生産量ともに最も多い地域です。昔はカジュアルな半甘口ワインが大量生産されていたことから’’安ワイン’’のイメージがついていた産地ですが、ここ数十年、若手醸造家の努力もあり高品質なリースリング産地のひとつとして世界的に知られるようになりました。

まさに、’’量産’’甘口ワインから’’質’’の辛口ワインへと最初に変貌を遂げた産地です。

ファルツ

ラインヘッセンに次ぎ、2番目に大きな生産地域です。こちらでも甘口ワインが量産されていましたが、ここでも活躍したのは熱心な若手醸造家たち。 品質向上に努め、今では’’量産’’から’’高品質ワイン’’へとイメージを覆した産地のひとつとして知られています。

リースリングだけでなく、グラウブルグンダー(ピノ・グリ)など高品質なブルグンダー系のぶどう栽培にも力を入れている産地です。

ラインガウ

「ドイツ5大畑」と呼ばれる銘醸畑のうち、4つもの畑を擁しているのがラインガウで、国内で最も高品質なリースリングの白ワインを生み出しています。輸出率も高い産地なので、ワインショップ等で見かけることも多いのがこちらの産地です。

ライン川沿いに位置するラインガウは、豊富な水、川面からの反射光と土壌の条件が揃っていて、ブドウ栽培に最適な環境が整っています。

モーゼル

ラインガウと並ぶ銘醸地で、「ドイツ5大畑」の残りの1つがモーゼルにあります。 モーゼルは山、川に囲まれた産地で、夏には35℃を超えるほど暑くなる一方、冬になると氷点下7℃前後に達することもあります。その冬の寒さのおかげで、ぶどうを凍らせて造る高級甘口ワイン’’アイスワイン’’の生産もこの産地では可能にしています。

また、’’ゼクト’’と呼ばれるスパークリングワインの主要産地でもあり、モーゼルからは、辛口はもちろん、極甘口、スパーリングワインなど様々なスタイルのワインが生まれます。

バーデン

ドイツ最南端の産地、そしてブルゴーニュの気候によく似ていることもあり、高品質な赤ワイン産地として有名です。赤ワイン用ぶどう品種であるシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)は特に近年、国際的評価が高く大変注目されている産地です。

ナーエ

比較的温暖なドイツ南西部に位置している地域ナーエは、白ワイン用ぶどう栽培が約75%を占めていてその中でもやはりリースリングが注目をあびています。ナーエは180種類もの非常に多様な地質を持っていることから、品種や味わいまでさまざまなスタイルのワイン造りが行われている興味深い産地です。

フランケン

こちらの産地の特徴はなんといっても、ワインボトルの形です。ボックスボイテル型と呼ばれる丸くて平たいユニークな形をしているので、ひと目見てフランケンのワインだ!と分かります。白ワインの生産がほとんどで、ボトルの見た目からも想像できるように’’辛口の力強い味わい’’が特徴的な産地です。

ドイツワインでよく見るブドウ品種と味わい

ドイツワイン

白ワイン用ぶどう品種 リースリング

ドイツを代表する品種であり、世界でも栽培面積第一位を誇る重要品種がリースリング。なんと世界のリースリングの6割がドイツで栽培されている、まさにリースリング大国です。

辛口から、甘口、極甘口なものまで幅広い表情をもっていて、白いお花やハチミツ、白桃などのうっとりするような香りが楽しめます。また、とても美しい酸とミネラルが特徴的で上品な味わいを生み出すリースリングは、シャルドネやソーヴィニヨンブランと並ぶ、’’高貴品種’’のひとつとされています。

白ワイン用ぶどう品種 グラウブルグンダー(ピノ・グリ)

フランス等で知られるピノ・グリは、ドイツではグラウブルグンダーと呼ばれています。 なんだか急に難しい言葉になりましたよね。 ドイツでは○○ブルグンダーと呼ばれる品種が多くあります。この’’ブルグンダー’’とは、「ブルゴーニュの」を意味している言葉で、その品種の故郷はブルゴーニュだということが分かります。

このぶどうは粒、房ともに小さめなので、ボトリティス・シネレア菌が付きやすいことから貴腐ワインの生産にも向いている品種です。優良ぶどうと言われるだけあり、非常に美しく、気品ある味わいです。

白ワイン用ブドウ品種 ミュラー・トゥルガウ

ドイツには’’交配品種’’とよばれるものが多くミュラー・トゥルガウはその代表品種です。交配品種とは2つの異なる品種をかけ合わせて造られたぶどうのこと。

ミュラー・トゥルガウはリースリング種とマドレーヌ・ロイヤル種の交配で造られています。なんだか小難しいですが、ドイツ国内ではリースリングに次ぎ2番目に多く栽培されているメジャーな品種ですし、日本でも多く見かけるのでぜひ覚えておきたいところです。 非常に香り高いフルーティな香りが特徴で若々しく軽やかなのでカジュアルに楽しんでいただけます。北海道でも評価の高いミュラー・トゥルガウのワインが造られているのでぜひ試してみて下さいね。

赤ワイン用ブドウ品種 シュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)

ドイツでの赤ワイン用ブドウ品種NO.1といえば、シュペートブルグンダーです。あなたももうお分かりだと思います。’’ブルグンダー’’ということは、ブルゴーニュからきている品種ということになります。

白ワインのイメージがあるドイツでは近年シュペートブルグンダーの赤ワインが世界的にも高い評価を得ています。その背景として若手醸造家の活躍、生産技術の向上はもちろん、温暖化の影響もあり、ぶどうが成熟しやすくなったことも挙げられます。 イチゴやラズベリーなどの赤い果実味が豊かで、繊細な酸が引き締めてくれる印象です。ブルゴーニュ産ピノ・ノワールの価格高騰が続く中、ドイツのシュペートブルグンダーは非常に高品質かつリーズナブルに手に入るのも人気の秘密です。 「この値段でこの美味しさ!?」と、うなってしまうほどのワインもあるから面白いですよ。

赤ワイン用ブドウ品種 ドルンフェルダー

シュペートブルグンダーに次いでよく見かけるのがこちらの品種です。ドイツで新たに交配して造られた比較的新しい品種ですが、赤ワイン用ぶどうの栽培面積は2位とすでにその存在感をみせつけています。

ラズベリーやチェリーなどの豊かな果実味に柔らかいタンニンや酸が特徴的です。ドルンフェルダーの甘口ワインには低アルコールも多いのでお酒が苦手という方や授乳中のママたちでも楽しめる品種です。

ドイツワインとおすすめのペアリング

ドイツワイン

ワインとのペアリングに欠かせないものとしてやはりその土地の郷土料理がありますが、ドイツ料理といってもあまり馴染みがないですよね。 そこで今回は家庭でもできるお料理とのペアリングをご紹介します。

ドイツワインは意外にも日本のお料理と相性が良いですよ。

あさりの酒蒸し

あさりの旨味がギュッとつまった酒蒸し。おいしいですよね。ワイン蒸しにすればよりワインとの相性も高まります。味付けはシンプルに塩のみで十分、そこに香り高いミュラー・トゥルガウやグラウブルグンダーの白ワインなんかを口に含むと、仕上げにレモンを絞ったような感覚が追いかけてきます。パスタを加えてボンゴレビアンコにしてもおすすめです。

お醤油味のザ・和食

お醤油や砂糖などを使った肉じゃがやタレの焼鳥などがオススメです。具材にじゅわっと染み込んだ甘辛い旨味。それをより引き立てるワインが、渋みがまろやかで果実の甘味を感じるシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール)です。 一方、エレガントな酸味が特徴のシュペートブルグンダーには、お魚でも相性は抜群です。ぜひブリの照り焼きやカツオのタタキなどとも合わせてみてください。

天ぷら・唐揚げなどの揚げもの

揚げもの料理には、ドイツで’’ゼクト’’と呼ばれるスパークリングワインと非常によく合います。ジューシーな油に包まれた口の中を、スパークリングのキレの良い酸、ミネラル、泡でリフレッシュさせてくれます。 女性はなるべく控えたい揚げ物ですが、スパークリングと合わせるとついぱくぱく食べ過ぎてしまうので要注意です。

スパイシーなソーセージ

ドイツといえばソーセージではないでしょうか?スパイスの効いたソーセージに辛口リースリングは非常によく合います。ソーセージたっぷりにジャガイモや玉ねぎと一緒に煮込んだポトフはお互いの風味が引き立ちとても美味しくいただけます。

また食後のデザートとして甘口リースリングを単独で楽しむのも最高ですね。

こんな人には是非ドイツを試して欲しい!

ドイツワイン

今までご紹介した通りドイツには白・赤ともに非常に高品質な辛口ワインがあります。ドイツワインは甘口でしょ?と思っていらっしゃる方にはぜひ、生まれ変わったドイツワインを試して頂きたいです。驚かされること間違いありません。

また、お酒が苦手な方、もしくは妊娠中や授乳中なのでワインは控えているという方はドイツワインがオススメです。低アルコールやノンアルコールのワインが多くあるので、気兼ねなく楽しんでいただけます。お酒が苦手な方は甘口だとなおさら飲みやすいので気に入っていただけるでしょう。

【+wine編集部より】+wineおすすめ!人気のドイツワイン

まずお勧めしたいのは「ドクターローゼン リースリング トロッケン」。モーゼルのカリスマ的リースリング生産者が造るコスパ抜群の1本です。+wine店長布川もこの1本がきっかけでドイツリースリングの虜になりました。

レモンやグレープフルーツを思わせるフレッシュさに、軽快かつ優しい酸があり、なんともエレガント。ゆっくり飲みたいのについつい手が伸びてしまう仕上がりで、本当にお勧めです。

続いてお勧めしたいのは「ヴィラヴォルフ ピノグリ」。こちらもリースリングに比べると果実味も濃厚で力強い仕上がりとなっています。爽やかさとフルーティーさの両方を求める方には是非お試しいただきたい1本。

最後にお勧めしたいのは「ドクターエル リースリング ゼクトトロッケン」。ドクターエルは先ほどご紹介したドクターローゼンが手がけるブランドで、よりカジュアルなデイリーワインを造る生産者です。

モーゼルリースリングのお手本のようなキレのある酸に滑らかな泡が心地よい1本ですので、暑い日にビール代わり開けるのはもちろん、ちょっとした日の乾杯にもぴったりです。

まとめ

いかがでしたか?今回はドイツワインについて詳しくご紹介いたしました。 ドイツは今や辛口ワインが2/3以上を占め、世界的にも評価されている高品質なものが多く産出されています。 逆をいえば、30%ほどが甘口ワインです。世界のどの国をみても3割も甘口ワインを造っているところはないでしょう。

一時は量産のため信頼性が揺らいだドイツではありましたが、今や’’質’’と’’量’’どちらにおいてもドイツの甘口ワインは世界一と言っても過言ではありません。 これを機会にあなたもぜひドイツワインの魅力に足を踏み入れてみてくださいね。