オーストラリアワインの特徴
オーストラリアはワイン生産量が世界第5位(注1)で、アジア・オセアニア圏ではトップのワイン生産大国です。
その国土の広さからも想像がつく通り、ワイン産地は東のニュー・サウス・ウェールズ州から西の西オーストラリア州までの約3,000kmの間に点在し、65個ほどに区分された産地の中に2,500軒弱のワイナリーが立ち並んでいます。
多種多様な自然環境で育ったブドウの中には、太陽をさんさんに浴びてパワフルに育ったブドウもあれば、南極からの涼しい風を受けて繊細に育ったブドウもあり、「オーストラリアワインと言ったらこれ!」とは一括りにはできないバラエティーさが魅力です。
ワインの製造方法もヨーロッパ諸国にならった伝統的なものから、最新の技術と機材で新たなアプローチをしたもの、最近ではオーストラリアでもナチュラルワイン(自然派ワイン)がじわじわとブームになってきています。
「どうやって好みのオーストラリアワインを見つけたらいいの?」
広大な土地ゆえのバラエティー豊かなワインを生産するオーストラリア。ブドウ品種が同じワインでも生産地(気候)の違いにより大きく雰囲気が変わってきます。
でもご安心ください!
各ワイン生産地には看板ワインがあるので、なんとなくエリアを把握すればワインを選ぶのも簡単になります。その生産地をオーストラリアの州ごとにご紹介するとともに、ワインとブドウ品種についても解説します。
※ワイン生産量の少ないクイーンズランド州、オーストラリア首都特別地域、ワインを生産していないノーザン・テリトリーは記載を省きます。
注1:State of the World Vitivinicultural Sector in 2021(2022年4月発行)参照
オーストラリアワインの有名産地
① 南オーストラリア州(州都アデレード)
オーストラリアワインのおよそ50%の生産量を誇っている州です。州の南の沿岸部に有名産地が集中しています。
バロッサ・ヴァレー/Barossa Valley 代表品種:シラーズ(赤)
オーストラリアで最も名の知れたワイン産地です。
ブドウ畑の半数をシラーズが占めており、国内最古のブドウ樹は1843年に植栽されてから今でもブドウを実らせていることで知られています。バロッサ・ヴァレーのシラーズはフルボディで、柔らかく溶け込んだタンニンに、熟したブラックチェリーやカシスのような凝縮した果実味と、アメリカンオーク由来の甘い口当たりが特徴です。
イーデン・ヴァレー/Eden Valley 代表品種:リースリング(白)
バロッサ・ヴァレーの東に隣接しているのがイーデン・ヴァレーです。
イーデン・ヴァレーは標高の高低差があり、低い産地(温和)ではシラーズ、高い産地(冷涼)ではリースリングを生産しています。特にリースリングが有名で、後述するクレア・ヴァレーと合わせてオーストラリア・リースリングの2大巨頭と言っても過言ではありません。
イーデン・ヴァレーのリースリングは高い酸味に、ライムやグレープフルーツなどの柑橘系の香りと味わいが楽しめます。10年ほど熟成したものはマーマレードやトーストのような風味が出てきます。
クレア・ヴァレー/Clare Valley 代表品種:リースリング(白)
イーデン・ヴァレーの北に位置しているのがクレア・ヴァレーです。標高が高いエリアでリースリングを生産しており、イーデン・ヴァレーと同じく高い酸味と濃いライムの味わいで知られています。
7年ほどの熟成期間を経てハチミツやトーストのようなニュアンスが出てくるのが特徴です。
アデレード・ヒルズ/Adelaide Hills 代表品種:ソーヴィニヨン・ブラン(白)
アデレードから25km東に位置する生産地で、ワイン畑がすべて標高400m以上に植えられています。その標高の高さから冷涼な産地と同じく、エレガントなスタイルのワインを作ります。
最も多く植えられているのはソーヴィニヨン・ブランで、トロピカルフルーツのような香りに爽やかな酸味が印象的です。
マクラーレン・ヴェール/McLaren Vale 代表品種:シラーズ(赤)
マクラーレン・ヴェールはアデレード南の沿岸部に位置しています。地中海性の温暖な気候ではありますが、海や風の影響で暑さが緩和されます。
シラーズをはじめ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、グルナッシュなど赤ワイン品種が主要です。シラーズはフルボディでプラムやダークチョコレートのほか、樽由来のスパイシーさを感じられるのが特徴です。
クワナラ/Coonawarra 代表品種:カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)
アデレードの南東で、ヴィクトリア州との州境付近に位置しているクワナラは、その珍しい土壌と上質な赤ワインで知られており、オーストラリアのボルドー地方とも呼ばれています。酸化した鉄分を含む赤い粘土質(テラロッサ)と石灰岩質から成る土壌はカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に最適で、オーストラリアを代表する銘醸地の一つです。
そのワインはカシス、ブラックベリー、プラムなどの黒系果実に、ユーカリを思わせる清涼感のある香りと味わいが特徴的です。果実味とタンニンの豊富さから何十年も熟成させられるポテンシャルを持っています。
② ニュー・サウス・ウェールズ州(州都シドニー)
オーストラリアのワイン産業において最も長い歴史を持つ州で、国内のワイン生産量はバロッサ・ヴァレーに続き2番手です。
ハンター・ヴァレー/Hunter Valley 代表品種:セミヨン(白)
ハンター・ヴァレーはシドニーから北に位置するワイン産地で、「ハンター・セミヨン」とセットで呼ばれるほど白ワイン品種のセミヨンが有名です。
高温で湿気の高い産地ですが、酸味をキープするため(収穫期の雨も避けるため)ブドウを早摘みします。結果、非常に高い酸味と低いアルコールをもつライトボディのワインが生まれます。
ハンター・セミヨンの興味深いところは、同じワインが10年ほど熟成されるとトースト、ナッツ、ハチミツのような複雑な香りと味わいに変化していくことです。
③ ヴィクトリア州(州都メルボルン)
冷涼な産地が複数ある州で、良質な白・赤・スパークリングを生産しています。沿岸部と内陸部で気候が異なるのが特徴です。
・ヤラ・ヴァレー/Yarra Valley 代表品種:ピノ・ノワール(赤)
メルボルンの北東に位置したヤラ・ヴァレーは州を代表するワイン産地です。ワイン畑が大きく3つのエリアに分けられており、それぞれ気候や地質、高低差がわずかに異なります。
特に有名なのはピノ・ノワールで、ストロベリーやプラムの果実味の豊かさと、滑らかなタンニンを有する高品質な赤ワインを生産しています。ピノ・ノワールから作るスパークリングワインも有名です。
モーニントン・ペニンシュラ/Mornington Peninsula 代表品種:ピノ・ノワール(赤)
メルボルンの南に位置するモーニントン・ペニンシュラ(半島)もピノ・ノワールで非常に有名です。海からの風の影響で冷涼な産地ですが、沿岸部由来の土壌も相まって、ピノ・ノワールには最適な環境です。
ここのピノ・ノワールは赤系果実のピュアさを兼ね備えながら、それでいてエレガントなワインを生産しています。
ヒースコート/Heathcote 代表品種:シラーズ(赤)
ヴィクトリア州の内陸部に位置するヒースコートは州内で最も多くシラーズを生産しています。その標高の高さから冷却効果がもたらされ、バロッサ・ヴァレーの濃厚なシラーズとは打って変わってミディアムボディで、果実味・酸味・タンニンのバランスがよく取れた非常に上品な赤ワインです。
④ 西オーストラリア州(州都パース)
ワインの生産量は少ない州ですが、その品質は国内トップクラスです。
マーガレット・リバー/Margaret River 代表品種:カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)
オーストラリアの最西で、パースの南に位置するのがマーガレット・リバーです。国内で最も顕著な海洋性気候を有しており、フランス・ボルドー地方に似た気候を生かしてカベルネ・ソーヴィニヨンから作られた赤ワインを多く生産しています。
メルローとブレンド(通称:ボルドーブレンド)され、熟したカシスやスミレなどのエレガントな風味を持つものから、果実味がパワフルなものまで様々なスタイルがあります。
⑤ タスマニア州(州都ホバート)/Tasmania 代表品種:ピノ・ノワール(赤)
ヴィクトリア州の南に位置する北海道の3/4ほどの大きさの離島です。オーストラリアでブドウ栽培が最初に始まった州で、南極からの風の影響で国内で最も冷涼な産地です。
全体の40%ほどをピノ・ノワールが占めています。タスマニアのピノ・ノワールはストロベリーやラズベリーなど赤系果実の精細な味わいのものから、果実味が凝縮して10年後に飲み頃を迎えるフルボディに近いものもあります。ピノ・ノワール単体またはシャルドネとブレンドしたスパークリングもとても有名です。
⑥ サウスイースタンオーストラリア
広域地理的呼称と言われるエリアで、「スーパーゾーン」とも呼ばれています。南オーストラリア州、ヴィクトリア州、ニュー・サウス・ウェールズ州、クイーンズランド州がゾーンに含まれており、この広域エリア内からランダムに採れたブドウで造ったワインは○○州の表記ではなく、「サウスイースタンオーストラリア」とラベルに記載されています。
いわゆる大量生産系のワインではありますが、高品質なブドウを育てるワイン産地もゾーンに含まれており、バランスよくブレンドしているため、コストパフォーマンスに非常に優れたワインが見つかることがあります。
オーストラリアワインでよく見るブドウ品種と味わい
オーストラリアのワイナリーの大多数が国際品種(世界的に知られているブドウ品種)と言われるブドウを育てています。
広大な土地と地理的多様性に富んでいるオーストラリアワインですが、オーストラリア人に「好きなワインは?」と聞くと必ず挙げられる2つのブドウ品種があります。
それがシラーズとピノ・ノワールです。どちらも赤ワインのブドウ品種ですが、大きく特徴が異なります。
白ワイン品種ではシャルドネとリースリングが人気で、こちらも好みが大きく分かれる品種です。
白ワイン品種①リースリング
ライトボディ~ミディアムボディ。
高い酸味と、レモンやライムなど柑橘類、白い花の香りと味わいを楽しめる爽やかな白ワイン品種。アルコールは12%前後と比較的低く、初めに開ける1本として最適で、カルパッチョなどの魚介類だけでなく、和食にもよく合います。
白ワイン品種②シャルドネ
ミディアムボディ~フルボディ。
アプリコットや桃など有核果実、パイナップルやバナナなどトロピカルフルーツ、樽のニュアンスの香りと味わいを楽しめるしっかりとした白ワイン品種。気候によって果実の雰囲気が、ワイナリーによって樽の雰囲気が大きく異なりますが、全体的に白身魚のソテーや揚げ物などと相性が良いです。
赤ワイン品種①ピノ・ノワール
ライトボディ~ミディアムボディ。
高い酸味と、ストロベリーやラズベリーなどのサマーベリーの香りと味わいを楽しめる繊細な赤ワイン品種。熟成期間を経ると熟した果実やマッシュルームなどの複雑なアロマを生み出します。
鶏肉や鴨肉などピノ・ノワールに合わせるための料理が数多く存在しますが、きのこ類、マグロなどの赤身魚にもマッチするオールマイティーさを持っています。
赤ワイン品種②シラーズ
ミディアムボディ~フルボディ。
カシス、ブラックチェリー、リコリス、中にはチョコレートやユーカリの風味を感じられる、オーストラリアで最も生産量の多い赤ワイン品種。
タンニンと果実味が豊富で、アルコールが15%を越えるものも珍しくはありません。オーストラリアではラムチョップやカンガルーステーキに合わせるのが定番ですが、BBQや焼き肉などお肉料理全般に合います。
こんな人には是非オーストラリアワインを試して欲しい!
オーストラリアで食事をしながら飲むアルコールと言えばビールかワインしかないと言われるくらい、性別世代関係なくワインが国民の飲み物として親しまれています。
そのため、食事に合わせることを意識して作られたオーストラリアワインはどれもお料理にピッタリなものばかりです。
価格もリーズナブルなワインが多いので、デイリーワインとして夕食のお供に是非試してみてください!
【+wine編集部より】+wineおすすめのオーストラリアワイン
まずお勧めしたいのは「アニーズレイン リースリング」です。
クレアヴァレーの由緒正しいワイナリーが作るお手本的なリースリングで、オーストラリアのリースリングを試したいという方にぜひお勧めしたい1本です。
とてもさっぱりしているので、和食にも合わせやすいのもお勧めポイントですね。
続いておすすめしたいのが「イエリングステーション リトルイエリング ピノノワール」。国内外の評価も高く、高コスパピノとして隠れファンが多い1本です。
甘い香りとまろやかな口当たりが特徴的で普段はあまり赤を飲まないという方にも十分おすすめできます。
最後におすすめするのが「マイクプレス シラーズ」です。
こちらは2,000円以下という価格ながら、オーストラリアらしいシラーズが味わえますのでデイリーワインとして非常におすすめ。+wine店長布川の家にも必ず1本は常備しています(笑)
まとめ
白ワインは酸味が高い爽やかなものから、トロピカルフルーツのような風味があるしっかりしたもの、赤ワインはベリー系の繊細な味わいなものから、熟したカシスのようなパワフルなものまで多種多様なワインを生産するオーストラリア。
ここでは紹介しきれないほど多くの有名産地を抱えるオーストラリアですが、日本から飛行機で9時間ほどで着く身近なワイン生産国です。
まだまだ海外旅行が難しい時代ではありますが、オーストラリアの大自然を思い浮かべながらワインを楽しんでみてくださいね。