スペインワインの特徴
スペインワインは、フランスやイタリアと並ぶ世界三大ワイン生産国の一つ。
ワイン造りの歴史は3,000年以上、ブドウ栽培面積は世界NO.1と泣く子も黙るワイン大国です。スペインというと、思い浮かべるのは、スペイン料理、スペインワイン、情熱的な踊りのフラメンコではないでしょうか。
スペイン料理は、特に日本人の味覚に合うと言われます。日本国内にもスペイン料理店がたくさんあり、スペインワインを気軽に味わう機会には困りません。
そんなスペインワインの特徴は、
- 豊富な日照量
- 地域ごとに気候や土壌が異なること
- スペイン固有品種やヨーロッパ品種など様々なブドウ品種をもとに多様なワインが生まれている
こと。
特にブドウ品種は、スペイン固有の土着品種が多いので、聞きなれない名前が多くあります。一見、初心者には少しハードルが高く感じるかもしれませんが、気軽に料理に合わせて楽しむのをおすすめします。なぜなら一度口にすると、穏やかな酸味、果実味豊でフルーティな味わいが楽しめる飲みやすいワインが多く、ワイン入門者にぴったりだからです。
一方で樽を使った長期熟成タイプのしっかりした赤ワインもあり、生産者の個性がワインの味わいに反映したユニークなワインも揃います。
その他、瓶内二次発酵を用いたスパークリングワイン「カヴァ」、白の酒精強化ワイン「シェリー」、ワインにフルーツを加えて作る「サングリア」などバラエティ豊か。「シェリー」は、ポルトガルのポートワイン、マディラワインと並び、世界3大酒精強化ワインの1つ。古いワインに新しいワインを注ぎ足しながら熟成させる、ソレラ・システムという熟成法も特色。
情熱的で個性的、チャーミングなスペインワインは、知れば知るほど奥深いワインと言えるでしょう。
スペインワインは安い?なぜ?
スペインワインはフランスやイタリアと並ぶワイン生産国でありながら、価格がとても良心的。その理由はどこにあるのでしょう。
理由の1つに労働コストと土地コストが安く抑えられるからだと言われています。それらがフランスなどと比べて低く、ブドウ自体が低価格で造ることができ、ワインの価格が抑えられるのです。
「カヴァ」と「シャンパーニュ」はなぜこんなに価格が違うの?
比較しやすい例として、スペインの「カヴァ」とフランスの「シャンパーニュ」を取り上げてみましょう。この2つは同じ伝統的製法(瓶内二次発酵製法)で造られるスパークリングワイン。実は価格が驚くほど異なります。
スーパーなどの量販店で、スタンダードな「カヴァ」は1,000円~2,000円程度で買えるのに対して、「シャンパーニュ」は5,000円以上するものがたくさんあります。その価格の違いは先に挙げた労働コストと土地コストに加えて、シャンパーニュの「ブランド力」によるものと言えるでしょう。
シャンパーニュのブランディングは、長い期間を掛けて、戦略的に創られてきました。シャンパンメーカーは広告やデザインに莫大な経営資源を投入し、広告宣伝を仕掛けているのです。その洗練されたデザインは、ファッション誌などの様々なメディアやイベントでも展開され、シャンパーニュのブランドイメージをさらに引き立たせています。
「カヴァ」の有名なブランドとしてフレシネ社やコドーニュ社などがあります。彼らもブランディングに力を注いでいますが、まだまだ大きな価格差があります。とはいえ、私たち消費者からすると、こだわりの製法やブドウ品種で造られた「カヴァ」を手頃な価格で楽しめる絶好の状況とも言えます。
これを機会に色々な「カヴァ」を試してみてはいかがでしょうか。
【ワイン豆知識】同じ製法で造られる「カヴァ」と「シャンパーニュ」は何が違うの?
どちらも瓶内二次発酵という製法で造られる「カヴァ」と「シャンパーニュ」。
手間と時間をかけて造られたスパークリングワイン。価格の違いの他、何が違うか少し紐解いてみましょう。
「カヴァ」はスペインの温暖な地中海性気候カタルーニャ地方原産のスパークリングワインです。昼夜の寒暖差が激しく、ワイン生育には最適と言われる地。「マカベオ」「チャレッロ」「パレリャーダ」といったスペインの土着品種をブレンドして造られます。酸味が穏やかで飲みやすく、辛口が中心です。
一方、「シャンパーニュ」は冷涼な大陸性気候のフランス北東部のシャンパーニュ地方で造られます。ワインの生育が難しい地と言われる地で、ワインの生産にはあまり適している地域とはお世辞にも言えません。そのため様々な技法を駆使してワイン造りを行っています。「シャルドネ」「ピノ・ノワール」「ピノ・ムニエ」を主にブレンドしています。シャープな酸味と繊細で細かな泡が特徴です。
「カヴァ」の法定熟成期間は、最も一般的なノン・ヴィンテージは最低9か月。リゼルヴァは最低15ヶ月の瓶内熟成。一方で、「シャンパーニュ」の法定熟成期間は、ヴィンテージ・シャンパーニュの場合は最低3年。
しかし「カヴァ」も「シャンパーニュ」も実際には規定よりも長く熟成期間を設けて作られる場合が多いようです。このように生産地、ブドウ品種、定められた熟成期間のルールが異なる点が挙げられます。
スペインワインの有名産地
地域ごとに気候や土壌が異なるスペインは、地域ごとにバラエティ豊かなワインを生まれています。
主なワイン産地は、
- 地中海に面したバルセロナ周辺
- 内陸のリオハ地区
- スーパーワインを多く生み出しているリベラ・デル・ドゥエロ地区
- 南部のヘレスやマラガ
など。
スペインを代表するスパークリングワイン「カヴァ」の90%がバルセロナ周辺のカタルーニャ州で生産されています。
スペインの北部を流れるエブロ川の両岸に広がるワイン産地がリオハ地区。ここで造られるワインの半分以上は赤ワインで、「テンプラニーリョ」主体です。
内陸部はドゥエロ川流域に広がるワイン産地で、スペインワインの約半分がこの地方で造られています。中でもリベラ・デル・ドゥエロ地区はスペインを代表する銘醸地のひとつ。良質な赤ワインの生産地です。
ラ・マンチャは、スペインの原産地呼称の中で最大栽培面積を持ち、白ブドウ品種「アイレン」を生産。すっきりとした白ワインが有名です。リアス・バイシャスでは産地の90%が白ブドウ品種「アルバリーニョ」を生産。フレッシュなで上質な白ワインを作っています。
南部のアンダルシア地方で造られる白の酒精強化ワイン。「パロミノ」というブドウ品種を用いて造られ、辛口のものがほとんどですが、一部甘口タイプも。世界3大酒精強化ワインの1つです。
スペインワインでよく見るブドウ品種と味わい
スペインを代表するブドウ品種は、酸度が低めで早く熟成する「テンプラニーリョ」。
果実味と酸、タンニンのバランスが良いワインになります。枯葉や紅茶を炒った様な香りが特徴です。
またアルコール度数の高いワインに欠かせない「ガルナッチャ」はスペインが起源のブドウ品種。ブレンドすることによりタンニンの強いワインを早飲みタイプのワインに仕上がります。場所によっては「グルナッシュ」とも呼ばれます。
そのほか「アルバリーリョ」「ビウラ」「ベルデホ」「マルバジア」など、他の国では聞きなれないブドウ品種がズラリ。
スペインでワイン用ブドウとして登録されているのは、なんと約160種類以上と驚くほど豊富です。同じ産地でも色々な品種のワインが造られています。
スペインワインが難しいと言われる理由は、ブドウ品種に「シノニム」と呼ばれる別名が付いている点。例えば、スペイン原産のブドウ品種「テンプラニーリョ」は、リベラ・デル・ドゥエロでは「ティント・フィノ」や「ウル・デ・リュブレ」などと呼ばれています。ラ・マンチャでは「センシベル」、マドリッドでは「ティンタ・デ・マドリッド」、ペネデスでは「ウル・デ・リェブレ」、トロでは「ティンタ・デ・トロ」と呼ばれています。
実はソムリエ試験では、各地のシノニムを覚えることは必須。スペインのブドウ品種にはシノニムがたくさんあるので、ソムリエ泣かせと言えます。
スペインワインとおすすめのペアリング
スペインワインとおすすめのペアリングは、やはり一押しはスペイン料理。
その土地の料理には「その土地のワインを」という鉄則にはまります。日本人が大好きなスペイン料理でペアリングを考えてみましょう。
①パエリアとのペアリング:ポイントは中に入れる具材
パエリアは地中海沿岸のバレンシア地方の郷土料理です。魚介系のパエリアには、白ワインやスパークリングワインの「カヴァ」、辛口のロゼなどがおすすめ。特におすすめは、ミネラル豊かな「アルバニーリョ」をしっかり冷やして。
肉系のパエリアには「テンプラニーリョ」の赤ワインを。ミディアムボディのものを選ぶと良いでしょう。もしワイン1本だけで様々な料理を楽しみたい場合は、「カヴァ」を選ぶと間違いなし。最初のタパス料理や食後のデザートにもぴったりです。
②生ハムとのペアリング:ポイントはあまり重すぎないワインを
スペイン産の生ハム、ハモンセラーノは豚もも肉を塩だけで熟成した、旨みたっぷりのおつまみです。ペアリングのポイントは、あまり重すぎないもの、酸味のあまり強すぎないものを。
軽めの「テンプラニーリョ」の赤ワイン、ロゼの「カヴァ」と合わせるのがおすすめです。
③アヒージョとのペアリング:ポイントは中に入れる具材
アヒージョはニンニクとオリーブオイルをふんだんに使い、グツグツと煮込んだ料理です。中に入れる具材によってワインを選ぶと良いでしょう。
砂肝やベーコンなどの肉系の場合は、中程度からフルボディタイプの赤ワインや、辛口のロゼワインとのマッチングがおすすめ。例えば、フルボディタイプの「テンプラニーリョ」を。
シーフードやキノコなどの場合は、辛口の白ワインや白の「カヴァ」、スペインの酒精強化ワイン「シェリー」との相性は抜群です。
例えば、ブドウ品種「ベルデホ」で造った白ワインをキリッと冷やして。「シェリー」は様々な飲み方が楽しめる酒精強化ワインです。「シェリー」を炭酸水で割ったカクテル「レブヒート」はおすすめ。「シェリー」は冷蔵庫に常備しておくと、そのままでも氷や炭酸水で割って、好きな味わいに仕上げることも可能。
一気にあなたをワイン通に仕立ててくれるでしょう。
こんな人には是非スペインを試して欲しい!
スペインワインは美味しい料理と仲間と一緒に、ワイワイ楽しんで欲しいお酒です。
仲間とのパーティに持ち寄るには最適。コスパ最強の「カヴァ」は、瓶内二次発酵という手間と時間がかかる製法で造られるスパークリングワインでありながら、良心的な価格で、リッチな気分が味わえます。
酸味が穏やかで果実味溢れる赤ワイン「テンプラニーリョ」は、長期熟成の本格的なものがある一方、ワイン初心者でも飲みやすいタイプが揃います。フランスワインは予算的に厳しい時、仲間でたくさんのワインを楽しみたい時にも最良の選択。
スペインワインはクオリティが高い上、安心感のある価格で購入できるので、気軽に試して欲しいワインです。
【+wine編集部より】+wineおすすめ!人気のスペインワイン
まず、おすすめしたいのが「ボデーガス マルティン コダックス マリエッタ」。アルバリーニョというスペインの辛口白ワイン定番のブドウ品種から造られているのですが、こちらは微発泡で少し甘口。アルバリーニョにしては珍しい仕上がりの1本です。
そして、3年連続サクラアワードダブルゴールド受賞という点も見逃せません。サクラアワードは女性が選ぶワインの賞ですが、まさに女性ウケぴったりの1本と言えるでしょう。
+wine店長布川も初めてマリエッタを飲んだ時は、その美味しさにびっくり。以後自宅にも必ず1本常備していますし、友人にも常に勧めています(笑)。
続いておすすめしたいのが、「マリア カサノヴァ ブリュットデブリュット」。
何度か話にでてきたカヴァです。こちらは3000円以下という価格ながら、シャンパンにも引けをとらないクリーミーな泡が特徴。布川的にはシャンパンよりこちらのカヴァが使いやすくてお気に入りです。
スペインでは知名度も高く、有名ホテルでの採用歴もある実力派です。
最後におすすめしたいのが、「ボデーガス アラーエス マラ・ビーダ」。
「シラー」や「モナストレル」がブレンドされた赤ワインですが、 果実味からくるジューシーさとまろやかなタンニン、穏やかな酸味がバランスが秀逸で、軽すぎず重すぎず「渋いのは苦手だが多少のコクは欲しい」そんな方に是非試していただきたい1本です。
ボトルも形もラベルもアーティスティックなので、手土産としてもおしゃれな1本です。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
スペインワインは高品質でありながら、コスパが高く、初心者にも最適なワインが揃います。他の国にはないブドウ品種で造られた個性的なワインがある一方、フランスのシャンパーニュと同じ瓶内二次発酵で造られる「カヴァ」、様々な楽しみ方が広がる酒精強化ワイン「シェリー」など、あらゆるシチュエーションで楽しめるワインたち。
情熱的なお国柄、仲間と一緒にワイワイ楽しめるコスパ最高のスペインワインです。ぜひあなたの一押しのラインナップに加えてみてくださいね。