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思わず話したくなる!赤ワインのタンニンの全て。

赤ワインタンニン

赤ワインと聞くと’’渋みが強い’’そんなイメージはありませんか?

ワインの味わいは、渋み、酸味、甘味、塩味などのバランスで構成されています。 そのうちの’’渋み’’は、ワインを構成する成分のひとつである’’タンニン’’が関与してきます。

今回は、赤ワインのイメージのひとつでもある’’渋み’’をもたらすタンニンについて、詳しくご紹介いたします。

ずばり、赤ワインのタンニンとは?

赤ワインタンニン

まずは、とても興味深いタンニンの由来についてお話しさせていただきます。

タンニンはさまざまな植物に含まれるポリフェノールの一種で、植物が天敵から自分の身を守るために発生している苦味成分と考えられています。

そして実はそのタンニンは、動物の皮をなめし「革」に変化させるために使われている物質でもあります。タンニンは英語でtanninと書きますが、その由来はtanning=皮をなめすこと。なめし革にすること。の意味から来ています。

そんな役割のあるタンニンが含まれているのは植物だけではありません。 成熟中の果実にも多く含まれています。 ぶどうの実がそのひとつです。 特にぶどうの皮、種子に多くのタンニンが含まれています。 赤ワインを醸造する際は、ぶどうの果皮や、種子も一緒に醸されるので、ぶどうに含まれるタンニンがワインに移行し、渋みが強く感じられるのです。

そして、赤ワインの香りで「なめし革のような・・・」と表現することがあるのはご存じでしょうか? 熟成された、上品な赤ワインに対して使われるとても良い表現です。 これはまさに、皮をなめす過程で出てくるにおいそのものからきているのです。

簡単にいうとバックやお財布など革製品の香りです。 え?それって良い匂いなの?と思われたかもしれませんが、 わずかなにおいであれば、ワインに上品さ、深みを与えてくれます。 多すぎると、単に臭い、いわゆるフェノール臭(絵具・消毒液などのにおい)へと変化します。

微妙な違いで大きく変化してしまうのです。 ワインは難しく、繊細に扱わなければならない所以のひとつかもしれませんね。

タンニンの含有量はどれくらい?

それではワインにはどのくらいのタンニン(ポリフェノール)が含まれるのでしょうか?

ワインはポリフェノール含有量が一番多い食品と言われています。 ずばり、100ml中200mg〜300mgのポリフェノールが含まれています。 他にもコーヒーや緑茶はポリフェノールを多く含む食品として知られていますが、それでも100ml中100mg〜200mgなので、いかにワインに多く含まれているかが分かります。

ここでひとつ、ワインのタンニン含有量がわかる簡単な方法をご紹介します。 ワインを口に含んだ時、うがい・・・とまでは言いませんが、歯にあてるように少しクチュクチュしてみてください。 そして飲んだ直後、唇や舌を歯にあててみると、ザラザラ、キュキュッとした感触になることがあります。 そのザラザラが強く感じるほど、タンニンが豊富に含まれているという証拠になります。

逆に、滑らかに感じられれば、タンニンがもともと少ない、もしくは時の経過により、まろやかに変化した熟成ワインと判断することもできます。 ぜひ一度試してみてください!

ここで疑問!白ワインにタンニンはあるの?

赤ワインタンニン

赤ワインにタンニンが含まれていることはなんとなく分かりましたよね。 では白ワインはどうなのでしょうか? まず、それぞれの醸造方法を知っていくことが大切になります。

先ほど少し触れた通り、赤ワインはぶどうの果皮と、種子すべてを一緒に醸して造られます。それによりダイレクトにワイン果汁にタンニン成分が移行され、渋みが造り出されます。

白ワインの場合、果皮、種子を取り除いてから果汁のみを醸し造られるのが一般的です。 ですので、赤ワインと比べるとタンニン含有量は、はるかに少なくなります。 しかし白ワインでも、果皮と一緒に浸漬させ、果皮からの成分抽出を行う’’スキンコンタクト’’と言われる製法もあります。

この場合は果皮から抽出されたタンニンが移行し、渋みを感じる複雑な味わいの白ワインになります。 白ワインも赤ワインと同じく、口の中でタンニンチェックをするのも面白いかもしれませんね。

タンニンの効果とは?体への影響や健康効果はあるの?

赤ワインタンニン

まず、ワインそのものにおけるタンニンの効果の一つとして、酸化を防いでくれることがあげられます。 ワインは長く保存していると、酸化が進み、酸っぱくて飲めなくなる場合もあります。

長期間の熟成を経ても、美味しく飲める’’熟成ワイン’’が白ワインよりも赤ワインに多いのは、酸化を防ぐタンニン含有量が関係してくるからなんですね。 良い熟成を経たワインのタンニンは、渋みのピークを達すると、徐々にまろやかに変化していき、口当たりの良いワインとなります。

また、タンニンはワインだけでなくコーヒーや緑茶など、身近なものにも多く含まれている成分ゆえ、私たちの身体にもどのような効果があるのかとても気になるところですよね。

実は私たちワインを飲む人にとっては嬉しい健康効果がたくさんあります。

  • 抗酸化作用
  • 抗がん作用
  • 動脈硬化や脳梗塞の予防
  • アルツハイマー病予防

など、こんなにも効果が得られるとなると、ワインを飲まずにはいられないですよね!

ではそもそもなぜ、ここまでの効果が期待されているのか。 それは、ワインに含まれるポリフェノールが、抗酸化力が高く、悪い活性酸素をやっつけてくれる効果があるからです。

人間は疲れがたまると身体に毒性のある活性酸素が作られます。 この活性酸素が老化や病気の引き金になると言われています。

特に女性として気になるのは、肌。 活性酸素により老化が進み肌が傷つけられシミやしわの原因にもなることはご存知かと思います。 ワインに含まれるポリフェノールはまさに、それを食い止める効果があるのです。 とっても嬉しいですよね!

ここで少し、本格的なお話しにはなりますが、きちんとした調査結果として、証明されているものをご紹介させていただきます。

ボルドー大学の研究グループは、一定量のワインを毎日飲み続けることが、老人性痴呆症やアルツハイマー病の予防に効き目があるという疫学調査結果を出しています。 また、フランスのリヨン国立保健研究所によると、1日に2〜3杯のワインを飲むと、さまざまな病気による死亡率が3割減るという調査結果も発表しています。

これらの調査結果に起因しているのが、ワインに含まれるポリフェノールだと言われています。 このように「ワインは健康的なお酒」と言っても過言ではないほど、私たちの身体に与える効果は大きいことが分かりますね。

赤ワインで花粉症が治った!?

赤ワインタンニン

ここで、個人的に実感している健康効果をご紹介させていただきます。

わたしは、12歳の春に花粉症を発症し、鼻水だけでなく目のかゆみ、熱、喉の痛みも伴うほどの重症でした。 薬も全く効かず、 ティッシュはボックスで持ち歩かなければ追いつかないほどで、毎春、苦しんでいました。

しかし、24歳の春、なぜか突然全く症状が出なくなったのです。 次の春も、その次の春も。 10年以上、あれだけ苦しんだ花粉症に襲われることがなくなりました。 なんでだろう?と思っていたちょうどその頃、ワインエキスパートの資格をとるための勉強をしていたところ、 「ワインには抗酸化作用がある。」 と習い、 ピン!!ときたのです。 そうです、 わたしがワインにはまり、毎日のように飲み始めたのが、23歳の時だったのです。

他に思い当たるふしを考えましたが、特に何かを気を付けたわけでもなく、変わったことと言えば、ワインを飲み始めたことくらいです。 ワインをほぼ毎日飲み始めて1年で、抗酸化作用により花粉症が治った。 そう考えるのは自然。 ですよね。 ワインが花粉症に効果があるという科学的根拠は出ていないと思います。

しかしワインには抗酸化作用があることは証明されています。 10年以上たった今でも、花粉症の再発はなく、 「わたしの花粉症はワインで治った。」そう信じられずにはいられません。

なお、これは個人的に現れた効果であって、もちろん全員に当てはまることではありません。 むしろ一般的には、ワインなど、アルコールの摂取は花粉症を始めとするアレルギー症状を悪化させることもあるので注意が必要です。

そして次に、もう一つ懸念しておくべき点についてご紹介します。

タンニンを摂りすぎると貧血になるって本当?

わたしの花粉症完治(?)のように、私たちにとってさまざまな良いことをもたらしてくれるタンニン(ポリフェノール)ですが、取りすぎると良くないとも言われています。

その理由として、タンニンは鉄イオンと結びつく性質があり、そのため体内の鉄分吸収を妨げてしまう恐れがあるからです。 タンニンを多く含む赤ワインを飲み過ぎることで、鉄分不足になり貧血をまねくこともありますので、気を付けたいですね。

一般的に赤ワインのお供として、相性の良いと言われている赤身のお肉は鉄分が豊富です。 これを一緒に合わせることで、鉄分をより多く摂取できるので、貧血予防にもお肉とのマリアージュはとってもおすすめです。

そして、アルツハイマーやがん予防にも効果があるとされているワインですが、1日1本以上を長期にわたって摂取すると、それらの病気リスクや老化を早めるという結果も出ているので、当たり前ですが’’適量’’を意識することが大切です。

タンニン少なめのおすすめ赤ワイン

タンニンの正体が分かったところで、どんなワインにどれだけタンニンが含まれているのか気になりますよね。

タンニンの含有量は、同じ赤ワインであっても、ぶどう品種で変わってきます。 比較的、ワインの色味が薄いものがタンニン少なめの傾向です。 おすすめ3つをご紹介いたします。

①フランスのガメイ種

ガメイ種は実が大きいのが特徴で、タンニンが含まれる果皮や種子に対して、果実の比重が大きくなることから、渋みが少ないワインとなります。

実はみなさんお馴染みの、ボジョレー・ヌーヴォーに使われる品種であり、 「渋みが少なく飲みやすい」というのはボジョレー・ヌーヴォーのワインを想像していただけると分かりやすいかと思います。

ボジョレー・ヌーヴォーが軽やかで飲みやすいのは、ガメイというブドウ品種で造られているからなのです。

②ピノ・ノワール種

ピノ・ノワール種は、果皮が薄く、ワインにするととても淡いキレイな赤色になります。 代表的な産地であるブルゴーニュはもちろん、ニュージーランドやドイツなど冷涼な地域のピノ・ノワールは比較的タンニンが少なく、美しい酸味をともなった繊細でエレガントなワインに仕上がります。

④日本のマスカット・ベーリーA種

日本の赤ワイン用ぶどう品種といえば、「マスカット・ベーリーA」という品種。 こちらの品種も、実が大きく果皮が薄い特徴を持っていて、ワインにすると渋みが少なく軽やかなタイプに仕上がります。

フルーティで、フランスのガメイに似たところがあります。 軽やかなイメージのあるマスカット・ベーリーAですが、最近では醸造方法を工夫して、厚みのあるタイプに仕上げる造り手も増えてきました。 さまざまなタイプのマスカット・ベーリーAを試してみるのも良いですね。

タンニン強めのおすすめ赤ワイン

赤ワインタンニン

タンニンが強めの赤ワインは、色調がとても濃いので見た目からでも分かりやすいです。 タイプで言うと「フルボディ」と呼ばれる、とってもしっかりしたワインになります。

おすすめのタンニン強め赤ワインを3つご紹介します。

①カベルネ・ソーヴィニヨン種

とても代表的なこの品種は、産地問わず小粒で果皮がとても分厚いです。 それゆえ渋みが多く抽出される傾向にあり、多くの産地では、渋みを和らげるために、他のブドウ品種と混ぜて醸造されるのが特徴的です。

フランスのボルドー産のカベルネ・ソーヴィニヨンが有名ですよね。 ボルドーでは、早く飲んでも美味しいように、メルロー種をブレンドするのが一般的です。 また、カベルネ・ソーヴィニヨンは熟成させることでより美味しく変化しますが、それは酸化を防止するタンニンが良い役目を果たしてくれているからこそなのです。

②イタリアのネッビオーロ種

イタリアの最も高貴なぶどうと言われており、「ワインの王」と呼ばれ愛されるバローロにも使われている品種です。 ネッビオーロは、果皮はとても薄くデリケートな品種で、ワインにしても色味は比較的薄くピノ・ノワールに似ています。 そう聞くと、「じゃあ、タンニン少ないのでは?」と思いますよね。

しかし、口に含むとビックリするほど渋いのです。 「見た目はピノ・ノワール、口の中ではカベルネ・ソーヴィニヨン」と言えば分かりやすいかもしれません。 ネッビオーロは、タンニンの多さから熟成に耐えうるポテンシャルを持つ品種なので、高級ワインに多く使われる品種ではありますが、お手頃価格のものもありますので、見かけられたら是非お試しください。

③フランス南西地方のタナー種

南西地方とは、フランスのボルドー南に位置する地域で「Tannat/タナー」という品種が多く栽培されています。 タンニン(Tannin)が強いことから、タナー(Tannat)という名になっているほどです。

こちらの品種で造られたワインはとっても色濃く、しっかりしたタンニンが感じられ、 少し飲むだけで、口の中が真っ黒になるほどの濃さです。 実際にわたしも、唇と舌が真っ黒になったのを覚えています。 飲む場所を考えた方が良いかもしれませんね(笑) しっかりしたワインがお好きな方にはおすすめです。

まとめ

いかがでしょうか? タンニンはただ渋いだけ。 そう思いがちですが、ワインにおける役割や私たちの身体への影響など、驚く意外な事実が多かったのではないでしょうか?

特に、健康効果に関しては、実際に研究結果として発表されているのでワインへの期待が高まりますよね。 ぜひ、これからの生活の中で、健康のためにも赤ワインを取り入れてみてください。 わたしのように、実際に効果が感じられるかもしれません。

しかし、飲み過ぎには注意です! 適量を心がけ、タンニンを噛みしめながらワインを楽しんでみてください

いと

ワインの店舗販売をはじめ、約8年程ワインのお仕事に携わる。 オーストラリアのほとんどの主要ワイン産地を巡り、現地ワイナリーでも勤務したこともあるほどのワイン好き。妊娠中にはノンアルコールワインにはまり、今でも嗜む子育てママ。WSET Level3、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート保有者。