Knowledge

  • スパークリング
  • ワインの知識
  • ワイン知識総まとめ

スパークリングとシャンパンの違いって?定義・味・製法全解説

シャンパンとスパークリングワイン解説

シュワシュワッと弾ける泡が爽やかなスパークリングワイン。女子会の乾杯に、お昼からの一杯に、または特別な日に飲まれる機会も多いのではないでしょうか?

スパークリングワインとは炭酸の入った“発泡性ワイン”のことで、一般的な白ワインや赤ワインなどの“非発泡性ワイン”のことをスティルワインと呼んでいます。

今回ご紹介するスパークリングワインはいわゆる発泡性ワインの総称なのですが、お酒好きな方なら必ず聞き覚えのある「シャンパン」についても交えながら、スパークリングワインを深堀していきます。

因みにスパークリングワインは英語圏での名称ですが、その他の国々では下記のように呼ばれているので覚えておいて損はございません!

  • フランス:ヴァン・ムスー/Vin Mousseux
  • イタリア:スプマンテ/Spumante
  • スペイン:エスポモーソ/Espumoso
  • ドイツ:シャウムヴァイン/Schaumwein 

スパークリングワインとシャンパンの違いとは?

シャンパンとスパークリングワイン解説

①定義の違い

前述の通り、スパークリングワインとは世界中の発泡性ワインをまるっと一括りにした呼び方です。

世界的に人気の高いスパークリングワインは、メジャーなワイン生産国では必ずと言っていいほどスティルワインと共に生産されています。世界中で生産されているということはそれだけ様々なスパークリングワインが存在しているということ。

スパークリングワインで知られるようになった産地は、産地名や別の名称で呼ばれることが徐々に定着していきました。その代表例が「シャンパン」です。もっとかみ砕いてお話しすると、シャンパンはスパークリングワインの中にある1つのジャンル=産地ということです。

②製法の違い

シャンパンはフランス・シャンパーニュ地方で生産されます。同産地以外で採れたブドウや指定外のブドウ品種を使用することはできず、定められた製造方法以外で生産したスパークリングワインもシャンパンと呼ぶことはできません。

シャンパーニュ地方以外のフランス国内でも多くのスパークリングワインを生産していますが、これらのワインもシャンパンと名乗ることはできないのです。

ではスパークリングワインの中でもなぜシャンパンがこんなにも有名なのでしょうか?

それを紐解くのにスパークリングワインの製造方法について少しだけ触れさせてください。 スパークリングワインには大きく下記5つの製法があり、その中でも重要なのがトラディショナル方式とシャルマ方式です。

  • トラディショナル方式(瓶内二次発酵方式)
  • シャルマ方式(密閉タンク方式)
  • トランスファー方式
  • リュラル方式(田舎方式)
  • 炭酸ガス注入方式

シャンパンはトラディショナル方式で生産されており、瓶内で2回目※の発酵を促すことから瓶内二次発酵方式とも呼ばれています。世の中に出回っているスパークリングワインの大多数は大きなステンレス製のタンク内で2回目の発酵が行われるシャルマ方式で生産されています。

因みにトラディショナル方式を行っているスパークリングワインはボトルのラベルにフランス語で“Méthode Traditionnelle”、または英語で“Traditional Method”と記載されていることが多いので、飲まれることがあれば是非確認してみてくださいね。

※1回目はベースとなるワインを作る際のアルコール発酵、2回目は炭酸ガスの生成がメインのアルコール発酵 

③味わいの違い

トラディショナル方式を行っているシャンパンとシャルマ方式を行っているスパークリングワインに限定してざっくりお答えすると、シャンパンは「より複雑な風味」があり、一般的なスパークリングワインは「果実由来のフレッシュな風味」と言えます。

というのも、2回目の発酵を担っていた酵母はその役目を終えると澱となり、その澱が自己分解を始めるとワインに溶け込みパンやビスケット、トーストなどの風味を与えます。

シャンパンは醸造工程においてこの澱に触れている期間が他のスパークリングワインよりも長いため、複雑な奥行きのある風味を持ち合わせているのです。

シャンパンがスパークリングワインに比べて高いのはなぜ?

シャンパンとスパークリングワイン解説

シャンパンにはその製造工程に様々なルールが設けられていますが、その中で最も代表的なのはワインの熟成期間※です。

もともと厳格なルールから人件費などを含む製造コストが高いシャンパンですが、製造してからワインを保管し、市場に出すまで時間もかかるため、そのコストに拍車がかかってしまいます。

一方、シャルマ方式で生産されるスパークリングワインは、大きなタンクで効率的良く製造するため、シャンパンより低コストで労働力も少なく済むのです。

※二次発酵のための瓶詰めから出荷するまでの期間、瓶詰めから澱抜きまでの期間

安いシャンパンと高いシャンパンに実際のところ違いはある?

シャンパンのスタイルの違いで価格が大きく異なってくるため、安いものと高いものとで味わいも異なると言えます。皆さんがシャンパンを選ぶ際の指標にもなると思いますので、まずはスタイルの違いと特出している点をご説明します。

ノン・ヴィンテージ/Non-Vintage 価格帯:★☆☆

最近では大手スーパーなどでも見かけるようになったのがノン・ヴィンテージと呼ばれるシャンパンです。ノン・ヴィンテージとは、収穫年の異なるワインをブレンドして作ったシャンパンで、最低熟成期間が15か月とシャンパンの種類の中では最も短いものです。

そのため生産量が多く、比較的手を出しやすい価格帯です。“モエ・エ・シャンドン/Moët & Chandon”など皆さんも耳にされたことがあると思いますが、店頭に並ぶモエ・エ・シャンドンのほとんどがこのノン・ヴィンテージシャンパンです。

ノン・ヴィンテージのボトルラベルにはその頭文字を取って“NV”と記載されているか、収穫年(西暦)が記載されていないのが特徴です。

ヴィンテージ/Vintage 価格帯:★★☆

“ノン”と付くからにはもちろんヴィンテージと呼ばれるシャンパンが存在します。ヴィンテージは天候に恵まれ非常に良質なブドウが育った年(当たり年)に生産され、最低熟成期間も36か月と非常に長くなるため、その希少価値からノン・ヴィンテージよりも高価格で取引されます。

モエ・エ・シャンドンで比較すると、ヴィンテージはノン・ヴィンテージの約1.5倍の価格となっています。

プレスティージュ・キュヴェ/Prestige Cuvée 価格帯:★★★

シャンパン生産者(メゾン)の最高級ラインであるプレスティージュ・キュヴェ、例えばモエ・エ・シャンドン社が手掛ける“ドン・ペリニヨン”(通称ドンペリ)は単一収穫年(ヴィンテージ)のワインから製造され、熟成にはどんなに短くても8年を要します。

2023年1月時点で最新のドン・ペリニヨンは2012年ヴィンテージのものとなっているため、上記のシャンパンよりもその価格が高いことが想像つくと思います。メゾンのスタイルにもよりますが、プレスティージュ・キュヴェのシャンパンはその芳醇的で複雑なアロマと、非常にスムースな泡を楽しめる最上質なワインです。

ロゼ/Rosé 価格帯:★☆☆

ピンク色をしたシャンパンで、黒ブドウ(主にピノ・ノワール)を主体に作られるシャンパンです。望ましい色合いになるまで絶妙な調整が必要で手間がかかるため、同じブランドのノン・ヴィンテージよりも若干価格が上がります。

ピノ・ノワール由来の赤系果実と厚みがありつつ、時にはブレンドされた白ブドウのドライな口当たりを感じられます。

ブラン・ド・ブラン/Blanc de Blanc、ブラン・ド・ノワール/Blanc de Noir 価格帯:★★☆

白ブドウ品種だけで作られるブラン・ド・ブラン(「白の白」という意味で主にシャルドネを使用)は軽やかで爽快な柑橘類の風味が特徴です。

黒ブドウ品種だけで作られるブラン・ド・ノワール(「白の黒」という意味で主にピノ・ノワールを使用)はブドウ由来の赤系果実をほんのりと感じられ、ブラン・ド・ブランより重厚な雰囲気が出てきます。

シャンパンは基本的に高い酸味と酵母の自己分解由来のパンなどの風味を持っています。ノン・ヴィンテージもパンの風味を持っていますが、澱との接触期間が短いためよりフレッシュな果実味を持ち、軽やかな印象があります。

ヴィンテージの中には時に36か月を大幅に超えて長期間ワインを熟成させたものもあり、それゆえ凝縮した複雑な風味を醸し出します。

つまりは熟成期間やブドウなどにこだわりぬいた生産量の少ないシャンパンはどうしても製造コストがその価格に反映してしまうため「高いシャンパン」となってしまいますが、その味わいや質は生産者の妥協のない至極の1本で、低価格帯のものとは大きな差があるのです。

シャンパンに似た美味しいスパークリングはある?

あります!シャンパンと言ったらトラディショナル方式(瓶内二次発酵方式)からくるパンやトースト、ブリオッシュのような濃厚で複雑な風味と繊細な泡立ちです。

シャンパンほど厳格なルールに則っている生産者は少ないですが、やはりトラディショナル方式で作られたスパークリングワインはシャンパンに似た味わいのものが多いです。

下記は世界的にも良く知られているトラディショナル方式で製造されているスパークリングです。

クレマン/ Crémant

クレマンはシャンパーニュ地方以外のフランス国内で作られるスパークリングワインで、ワインは澱と一緒に最低9か月間熟成させる必要があります。こちらも製造方法と熟成期間に沿わない国内のスパークリングはクレマンと名乗ることはできません。

アルザス地方が最も有名な産地で、クレマン・ダルザス/ Créman d’Alsaceと呼ばれています。クレマンは大抵、その土地の主要品種またはサブ品種のブドウを使用して作られます。

カバ/Cava

スペイン・カタルーニャ州が主要産地で、スペイン料理店に必ずと言っていいほど置いてあるのがカバです。

白ブドウを主に使うためドライで飲みやすく、最低熟成期間はクレマンと同じく9か月間です。シャンパンのように熟成期間に沿った規定があり、最上級のものでは最低熟成期間が36か月間のカバもあります。

キャップ・クラシック/Cap Classique

南アフリカのスパークリングワインと言えばキャップ・クラシックです。ボトルラベルには“Méthode Cap Classique”と記載されています。

使用するブドウ品種の規定はありませんが、南アフリカの主要白ブドウ品種であるシュナン・ブランや、シャンパンにならってシャルドネやピノ・ノワールを使ったスパークリングワインを生産しています。2021年ヴィンテージより最低熟成期間が9カ月から12カ月に変更となり、スパークリングワインとしてのポテンシャルを世界的にも期待されています。

【シーン別】こんな時はシャンパン、こんな時はスパークリング!

シャンパンとスパークリングワイン解説

F1レーサーが表彰式でシャンパンシャワーをするように、シャンパンはやはり特別な日やお祝い事で飲んでいただけると生産者のこだわりをより感じ、記憶にも残るのではないでしょうか。

結婚記念日や昇進のお祝いなど、レストランでボトルを開けるのも良いですし、「今夜はシャンパンでお祝いだ」という際にボトルを冷蔵庫に入れるワクワク感も含めてシャンパンを楽しむ一部だと思います。

スパークリングワインはホームパーティーの乾杯で仲間とワイワイと、夏の暑い日やピクニックでおつまみと一緒に、またはご家庭でビールの代わりに気軽に飲んでいただけるのがスパークリングワインの良さだと思います。

世界各地のスパークリングワインでお料理とのペアリングを模索してみるのも良いかもしれませんね。

まとめ

皆さんそろそろスパークリングワインが飲みたくなって来た頃ではないでしょうか?

シャンパンはレストランや海外旅行などで飲まれることが多いと思うのでオーダーの際のワンポイントアドバイスです!日本語ではシャンパンと呼んでいますが、フランス語になると「シャンパーニュ」、英語になると「シャンペーィン」と発音が変わります。ぜひ海外でもシャンパン、そしてその土地のスパークリングワインを楽しまれてくださいね。

ありたす

第2の故郷であるオーストラリア・タスマニアのワイン輸入を目指す30代新米ライター。 2020年にワインエキスパート、2022年にメルボルンでWSET Level 3を取得。 皆さんがワインをもっともっと好きになる記事をお届けします!