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飲みやすい人気の甘口白ワイン9選。味の特徴に選び方のコツまで。

甘口ワイン

ワインといえば赤・白・ロゼ・スパークリングワインなどさまざまなタイプがありますよね。おそらくどれも辛口のワインを想像されるのではないでしょうか? 実際にワインの多くは辛口ではありますが、実は甘口においてもたくさんの種類があることはご存じでしょうか?

その中でも、特に上品で甘美な高級甘口白ワイン愛好家は少なくありません。 そこで今回は、甘口白ワインの特徴や種類、選び方のコツまで詳しくご紹介します。

最後まで読めば、あなたにぴったりのワインが見つかること間違いなしです。

そもそも甘口白ワインとは?

甘口ワイン

甘口白ワインとは、その名の通り’’甘い白ワイン’’のこと。特に白の甘口は、ドライフルーツやマンゴー、ハチミツ、アプリコットや白桃など、想像しただけでもほっぺたが落ちそうになる贅沢な’’甘みあるフルーツ’’を感じることが多いです。 一口に甘口白ワインといえど、製法やぶどう品種、産地の違いで非常に多岐にわたります。 どの程度ぶどうの糖分が残っているのかによって甘さの度合いも大きく変わってきます。

そもそも糖分が’’残る’’とはいったいどういうことなのでしょうか?

まずは甘口白ワインを知る上でぜひ覚えておいてもらいたい造り方についてご紹介します。

知っておきたい甘口白ワインの製法

甘口白ワインを造る方法としては主に2つあります。

➀ぶどう本来の糖分を上げる

そもそもぶどうには、糖分が多く含まれており、その糖分がワイン酵母と合わさることで発酵しアルコールと二酸化炭素を作りだします。この工程はアルコール発酵と呼ばれています。 アルコール発酵中に、糖分が完全にアルコールに変換されれば、糖分が残っていないワイン、すなわち辛口ワインが出来上がります。

通常のぶどうだとアルコール発酵を終えるまでにすべての糖分がなくなってしまいます。 そこで本来ぶどうの持つ糖分をより高くすることで、アルコール発酵が自然に終了した後でもまだ糖分が残っている状態にすることができるのです。

自然な状態でアルコール発酵を終えているので、アルコール度数も十分にある甘口ワインが出来上がります。ぶどうそのものの糖分を上げるためには気候や栽培努力が不可欠です。そのため高級ワインが多い傾向にあります。

➁アルコール発酵を途中でストップする

先ほどご説明した通り、特別に糖分を上げたぶどう以外では、アルコール発酵が自然に終わるまでに糖分が完全になくなってしまいます。 そこで通常のぶどうであっても、アルコール発酵を人為的にストップすることで、アルコール発酵しきれなかった糖分が残った状態になり、結果甘口のワインが出来上がることになります。

アルコール発酵を途中でストップしているので、アルコール度数が上がりきらず比較的’’低アルコール’’になることが多いのが特徴です。

甘口は飲みやすくアルコール度数も低めな印象はありませんか?それにはこの製法が大きく関わっていたからなんですね。

特殊な甘口ワイン

発酵を途中でストップする方法としては’’冷却’’が一般的に行われている製法です。しかしもうひとつ特殊な方法もあります。

それは、アルコールを添加することです。 アルコール発酵途中にさらに人為的にアルコールを加えることで、ワイン中のアルコール度数が早くに限界まで達し、糖分を残したまま発酵を終わらせることができます。 この製法の甘口ワインは、アルコールを添加して出来ているので’’高アルコールの甘口ワイン’’へと変化します。アルコール度数は15度以上。甘口って書いてあるから飲みやすそうと思って選んでしまうと大変なことになりますね!

後ほどこのタイプのワインもご紹介しますのでお楽しみに。

甘口白ワインで有名な産地や品種9選

代表的な、かつおすすめの甘口白ワインをテーマ別にご紹介いたします。すでに、甘口ワインがなぜ甘くなるのか?を知って頂いたのでよりわかりやすく読んで頂けることでしょう。

低アルコール甘口白ワイン ①ドイツ×リースリング

甘口白ワインといえばドイツのイメージはありませんか? ドイツでは古くから甘口ワインが造られており、日本でも爆発的ブームになったこともあります。特にリースリングはドイツを代表するぶどう品種であり、中甘口から高級な極甘口まで多くの種類があります。

白いお花やハチミツ、白桃などのうっとりするような香りが特徴的です。リースリングだけでなくミュラー・トゥルガウといったドイツ特有のぶどう品種などとブレンドして造られることが多いです。比較的どれも低アルコールで気軽に楽しむことができます。

②イタリア×モスカート 

イタリアは何と言ってもモスカート種で造られる白ワインが有名です。別名マスカットとも呼ばれていて、食用ぶどうでもある親しみのある品種です。イタリアでは白ワインはもちろん、ほんのり泡を感じる微発泡タイプやスパークリングワインが大変人気です。

アルコール度数も低めで、マスカットをそのままかじったようなジューシーな甘さが口の中に広がります。

➂オーストラリア×モスカート

モスカートはイタリアだけでなくオーストラリアでも美味しいものを造っていて非常におすすめです。特に南オーストラリア州やヴィクトリア州などで低アルコールでフルーティな飲みやすいワインを多く生産しています。

私自身オーストラリアで生活していた頃、冷蔵庫に常に何本か用意していて、お風呂上りに良く冷えたモスカートワインをグビッと飲むのを楽しんでいました。お風呂上がりのモスカートは最高ですよ。

④アルザス×ゲヴュルツトラミネール

フランスのアルザス地方にも素敵な甘口白ワインがあります。おすすめはゲヴュルツトラミネールというアロマティックな品種を使ったワイン。ライチのような特有の香りや、コリアンダーのスパイス感が特徴で、ぜひ試していただきたい面白い品種です。

他の国でも栽培されている品種ではありますが、特にアルザスのものは、収穫をあえて遅くし、過熟した糖度の高い状態のぶどうを使う高品質なものが多いのでおすすめです。アルザスではリースリング種を使用した甘口ワインも高い人気があります。

貴腐ワイン

貴腐ワインは甘口白ワインがお好きであれば、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか? カビの一種である貴腐菌と呼ばれるものがぶどうに付着することで、糖度が増し干しぶどうのような甘いエキスの凝縮されたぶどうとなります。このぶどうから出来るワインは貴腐ワインと呼ばれ、栽培が困難なことから非常に高級なものが多いです。

ちなみに先にご紹介した甘口ワインの製法①の例がこれにあたります。 貴腐ワインの中でも世界三大貴腐ワインと呼ばれる産地をご紹介します。

⑤ドイツ×リースリング ドイツ

は1700年代後半からすでに貴腐ワインが造られていたほどの歴史ある国です。ドイツにはブドウ果汁の糖度によって6つの等級があります。貴腐ワインはその最上級に位置していて、「トロッケンベーレンアウスレーゼ」と呼ばれています。果実味に華やかな香りが特徴です。使われる品種はリースリングだけでなく、赤ワイン用ピノ・ノワール種を白ワイン用に造ったものなどもありさまざまです。

⑥フランス・ソーテルヌ×セミヨン

ワインの本場、フランスでももちろん甘口ワインは造られており、世界三大貴腐ワインはボルドー地方にあるソーテルヌから生まれています。3000円台のお手頃なものもありますが、特に世界的に有名なのがシャトーディケムです。10万円を超えるものもあるほどでまさにソーテルヌの頂点。

白ワインでありながら数十年の熟成にも耐えられるほどのポテンシャルを持っています。特別な日を飾るのにはピッタリなワインです。

⑦ハンガリー×フルミント

ハンガリーのワインと聞くとピンとこない方も多いかと思いますが、「トカイワイン」というと聞いたこともあるのではないでしょうか?トカイアスーとも呼ばれますが、主にフルミント種で造られる貴腐ワインです。フルミントは酸が非常に高いのが特徴で、同時に十分な糖度を持っていてリッチな味わいを表現してくれます。蜜、アーモンドやヘーゼルナッツを思わせる贅沢な香りで世界的にも高い評価を得ています。意外と日本でも手に入るのでぜひお試しください。辛口ワインもあるので選ぶ際には「アスー」と書かれたものを選んでみて下さいね。

アイスワイン

アイスワインは、凍ったぶどうで造られるワインのことです。気温が-8℃以下になるとぶどうが樹上で凍ります。実の水分は凍り、凍らず残った他のエキスが凝縮した状態になり、そこから得られる果汁は非常に糖度の高いものになります。 ぶどうを自然な環境下で凍らせる必要があり、限られた冷涼地でしか造られないこと、また抽出される凝縮エキスもごく少量となるため高級なワインとなります。’’菌’’が付着する貴腐ワインと比べると、ぶどうのピュアさをより感じられます

⑧カナダ×ヴィダル

アイスワインといえばカナダ。ヴィダルという聞きなれない品種で造るアイスワインが多く、非常にフルーティで高い酸をもっているのが特徴です。またヴィダルは茎が強く耐寒性があるため、カナダのような冷涼な土地でも高い糖度を持ったぶどうに育つことからアイスワインの品種として根付いていて現地の人からも人気となっています。非常に寒い地域で造られていますが、意外にも味わいは南国トロピカルを感じさせる果実の香りや、濃厚ななかにキレイな酸が引き立つワインとなります。

⑨ドイツ×リースリング

ここでもドイツが登場します。ドイツでも氷点下の限られた環境下で育ったぶどうで造られる希少なアイスワイン。品種はドイツ国内最大面積を誇るリースリングです。口に含むと芳醇な甘やかな果実の香りが広がり、それを引き締める酸やミネラルがしっかりと感じられるので意外にさっぱりとした印象になります。 ドイツのアイスワインは最低アルコール度数5.5と低めなので、カナダのものより飲みやすさを感じることも特徴です。

甘口白ワインが好きな方に、試して欲しいその他のワイン

赤スパークリング

甘口派だから赤ワインは苦手。という方でも美味しく飲んでいただけること間違いなしの赤のスパークリングワイン。 代表的なものが、イタリアのランブルスコ。 イタリア現地はもちろん、日本でも密かに人気のある微発泡タイプのワインです。辛口、甘口どちらもあるので購入の際には注意が必要です。

辛口がご希望ならSecco(セッコ)やSemisecco(セミセッコ)、甘口ならAmabile(アマービレ)やDolce(ドルチェ)とラベルに書かれたものを選ぶと間違いないでしょう。甘口だとアルコールは8%ほどでとても飲みやすいです。

非常にフルーティながら、赤ならではのほのかに感じる渋み、さわやかな酸味のバランスがとれたワインで、お料理とも合わせやすいのでおすすめです。

またオーストラリアのシラーズで造られた赤スパークリングもおすすめです。 シラーズならではの非常に濃厚な果実味やスパイス感、しっかり感じるタンニン、それでいてどこか甘味を感じる、素直に美味しい!と言えるワインです。

ロゼワイン

ロゼワインにも飲みやすい甘口があります。 フランス、ロワール地方のロゼダンジュ。グロロという珍しい品種で造られるロゼワインで、イチゴやさくらんぼなどのフルーティな香りにほんのり甘味が広がるチャーミングなロゼです。

そして実はアメリカ、カリフォルニアもロゼワインの宝庫です。アメリカで定番の品種ジンファンデルを使ったホワイトジンファンデルという甘口ロゼワイン。フルーティで、甘味もありながら爽やかなロゼワインです。 ロゼワインはどんな料理にも合いやすいので、食事のおともにおすすめです。甘口白ワインがお好きな方には気に入っていただけること間違いなしです。

ぜひ一度この機会にロゼワインも試して頂きたいです。

酒精強化ワイン

冒頭でご紹介した発酵を止める方法としてアルコールを添加することがあります。そのワインを酒精強化ワインと言います。このタイプのワインは甘く、さらには高アルコール(15度〜22度)になりますが、アルコールが高いのは苦手・・・というだけで敬遠してしまうのは非常にもったいないです!

代表的なものに、スペインの’’シェリー’’があります。辛口は香りのクセが強く慣れないと飲みにくさがありますが、ペドロヒメネスやモスカテルという品種で造られる極甘口のシェリーは官能的な美味しさです。トロッとした口当たりに、プルーンやレーズン、ドライいちじくなどの香りで口中とろけるほどの美味さです。

個人的にも大好きなワインのうちのひとつです。ぜひ一度試してみてください。

甘口白ワインと料理のペアリング

甘口白ワインは、食事中に楽しむことはもちろん、食前酒、そして食後のデザートワインとしてもおすすめで、楽しみ方は無限大です。

エスニック料理

甘口ワイン

タイやインド,、中華料理など香辛料を使ったお料理にはドイツなどほんのり甘さのある白ワインや、ゲヴュルツトラミネールがおすすめです。特にゲヴュルツトラミネールはワインの持つスパイシーさと、お料理に効かせた香辛料とが上手くマッチします。魚介類とも相性が良いので、スイートチリで頂く生春巻きなんかもいいですね。 エスニック料理にはロゼワインも定番でおすすめです。

鍋料理

鍋の種類はさまざまですが、甘口白ワインとおすすめなのがキムチ鍋や坦々鍋。 とうがらしや豆板醤の辛み成分たっぷりですが、甘口ワインと合わせることで、辛みに隠れた’’旨味’’をよく引き出してくれます。 一番のおすすめは、もつ鍋に甘口赤スパークリングです。とっても濃厚なスープとワインの果実味、タンニンが口の中で一体化して旨味が爆発。もつの脂感も泡ですっきり。我が家ではもつ鍋の日はかならずオーストラリアの赤スパークリングを選んでいます。

ブルーチーズ

甘口ワイン

ここからもはや料理とは言えなくなりますが悪しからず。 独特の香りでとってもクセのある青カビタイプのチーズ、苦手という方も多いかもしれません。そんな方はぜひ、甘口白ワインと合わせてみてください。特に貴腐ワインは相性抜群で、ブルーチーズの強い塩気とワインの甘味が見事に調和してとってもマイルドになり食べやすくなります。個人的には、さらにはちみつをかけて楽しんでいます。

もうやみつきになってしまうほど美味しくなるのでぜひお試しください。

アイスクリーム

アイスクリームに、貴腐ワインや、甘口シェリーをかけて贅沢に頂く。アイスクリームはシンプルなバニラ味がおすすめ。安いアイスクリームでも高級品に早変わりです!

ケーキ

ケーキには、すっきり微発泡タイプもよし、極甘口でゆっくり味わうのもおすすめです。フルーツをたっぷり使ったケーキは、ワインの果実味、ほのかな甘さと上手くマッチします。また、スペイン原産であるシェリーは、バスクチーズケーキとの相性は抜群です。チーズのリッチさとシェリーの甘味の相乗効果といったら、うーーーん!!!っと唸りたくなる美味しさです。ぜひ試してみて下さい。

ちなみに、貴腐ワインやアイスワインなどの極甘口のワインは、それ単体でもうすでにデザートです。一口一口ゆっくりと時間をかけて味わうのも良いですね。

甘口白ワインをもっと美味しく飲むコツ

甘口白ワインは、かならず冷蔵庫でよく冷やすと良いです。甘味のあるワインは温度が高いと味がぼやけてしまいがちです。特に発泡ワインはキンキンに冷えた状態がおすすめです。

極甘口の貴腐ワインやアイスワインは、野菜室の温度くらいがベスト。冷やし過ぎると本来の香りが発揮しなくなってしまいます。 また、甘口ワインは糖度が高いので酸化しにくい特徴があります。ですのでボトルを開けてからもしっかりとコルクを戻した状態で冷蔵庫に保管すれば数日は持ちます。

1日1杯、ゆっくりと楽しむのもいいですね。

まとめ

飲む時を選ばず、マルチに活躍できる甘口白ワイン。 乾杯にスパークリング、食事と一緒に白ワイン、食後にはデザートワイン。など甘口白ワインのフルコースを体験するのも素敵ですね。

また、育児につかれた一日の終わりにホッとゆっくりするにはとっても良いお供にもなる甘口白ワイン。ぜひお気に入りを見つけて楽しんでみて下さいね。

 

いと

ワインの店舗販売をはじめ、約8年程ワインのお仕事に携わる。 オーストラリアのほとんどの主要ワイン産地を巡り、現地ワイナリーでも勤務したこともあるほどのワイン好き。妊娠中にはノンアルコールワインにはまり、今でも嗜む子育てママ。WSET Level3、日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート保有者。