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授乳期の飲酒について

今日は授乳期の飲酒について、少し書いてみたいと思います。

少し前、米国の歌手ビヨンセがSNS上でワインを飲む写真をシェアし、「授乳中にも関わらず飲酒をしている」と大炎上騒動になったことが記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。当時ビヨンセが本当に授乳期だったのか、彼女の飲酒が授乳に悪影響を及ぼすものだったのかは、本人にしか分かりませんが、、、SNS上には、授乳期の飲酒について様々な意見が飛び交いました。

そこでこの記事では、日本はもちろん、世界では授乳期の飲酒はどのように捉えられているかをご紹介します。

先に言っておきますと、授乳期には飲酒はしないほうがいいに決まっています(笑)しなくても我慢できるのであれば、しないほうがいいに決まっているんです。

ただ、世の中そんな簡単ではありません(笑)ファストフードが健康によろしくないことは誰もが知っているけど、世界には数えんばかりのファストフードチェーンがあります。バランスが良い食事が理想なのは分かっているけど、カップラーメンが食べたい日だってあるんです。世の中そんなもんです。

頭では分かっていることに欲望が素直に従えないことの方が多いのが、人間なんです。

さて、

話を戻しまして、授乳期の飲酒に関してですが、まず、日本ではこのように考えられています(医学書より引用)。

「アメリカ医学研究所Institute of Medicineは、アルコール摂取量は1日あたり0.5g/kg(母親の体重)以下と勧告している。60kgの女性ではビール2缶、テーブルワインでグラス2杯、リキュール60mlに相当する。アルコール飲用後約2時間は授乳を避けたり、母親がアルコールの影響を感じなくなるまで授乳を待つ必要があると言われているが、最も良いのは禁酒することである」

つまり「どうしても飲みたい場合、絶対飲めないということではないが、量と時間に気をつける必要があり」という解釈です。

ちなみに、アメリカの小児科学会も上記と同内容でガイドラインを発表しています。

イギリスのNHSのWebページには以下のように記載されていました。

「An occasional drink is unlikely to harm your breastfed baby. But never share a bed or sofa with your baby if you have drunk any alcohol. Doing this has a strong association with sudden infant death syndrome (SIDS). To keep health risks from alcohol to a low level, it's safest not to drink more than 14 units a week on a regular basis.

(訳)たまにの飲酒が授乳中の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性は低いですが、飲酒をした際は添い寝をすることを避けましょう。飲酒時の添い寝はSIDS(乳幼児突然死)と関係性が強いと考えられています。アルコールによる健康被害リスクを低くするために、1週間の飲酒量を14ユニット以下に抑えることが大切です。」

こちらも飲酒量に気をつける必要があるという認識ですね。ちなみに14ユニットは小さなグラスでワイン10杯分なので、1週間分といえど結構な量になりますよね。

このように、日本も世界も「飲めなくはないが量と時間に配慮すべき」というガイドラインを発表しています。

アルコールは一度摂取しても、時間が経てば体から抜けていくものです。その時間を考慮して、さらには量にもしっかり配慮すれば、「授乳期だから完全に飲めない」ということではなさそうです。

ということで、アルコールの代謝にどれだけの時間がかかるのか計算してみましょう。

アルコールが体から抜ける時間を計算する方法は以下の通りです。

  1. 飲料に含まれるアルコール量(純アルコール数)を計算する「飲料の量xアルコール度数x0.8」
  2. 計算した純アルコール度数が体から抜けるまでの時間を計算する「純アルコール量÷(体重÷10)」
一見難しく見えますが、具体的な数字を入れると簡単です。
例えば、度数13%のワインを125ml飲んだ場合、純アルコール数は125x0.13x0.8=13で13gとなります。飲んだ人が体重50kgの場合、1時間で代謝できるアルコール量は5gなので、13÷5で2.6時間という計算となります。
つまり、2.6時間経てば、体からアルコールが抜けるという計算になります。ただ、これはあくまで計算であって、実際は本人の代謝やその日の体調、飲食の有無なども大きく関係してきますので、この数字を鵜呑みにしていいというわけではなく、あくまで目安程度に捉えることが大切です。

 

さて、だいぶ長くなってきてしまいましたが、

結論としては、日本も世界も「授乳期の飲酒は絶対にダメというわけではないが、量と時間に配慮すべき」という考え方ということがわかりました。

とはいえ、何度も言いますが、飲まないに越したことはありません。飲まないのであれば、こんな難しい計算をする必要も時間を意識する必要もないんです(笑)

「でも飲みたい!」という方は

  1. 頻度と量に十分配慮する
  2. 飲酒後は授乳間隔をしっかり開ける(次の授乳はミルクにするなどがよりベター)
  3. ミルクチェックをする

といった工夫が大切です。

③のミルクチェクに関してですが、母乳に含まれるアルコールを調べる方法のことです。別の記事で詳しくご紹介していますので、気になる方はこちらも合わせて覗いてみてください。

私は、授乳期のお母さんが飲酒をするこが絶対ダメとは思いません。妊娠中、たくさんのことを諦めて我慢してきたお母さんが、授乳期にしっかり配慮して少々お酒を飲むくらい問題ないと思っています。

この記事をここまで読んでくださっているあなたは、きっとそんな「しっかり考えてるお母さん」です。量や時間に配慮するなど、まだまだめんどくさい部分はありますが、是非、罪悪感を抱かずたまにはお酒を楽しんでください。

 

布川玲愛

+wine店長。日本ソムリエ協会認定のJ.S.A.ワインエキスパート。ワインエキスパート勉強中に第一子を妊娠したことをきっかけに、+wineをオープン。学生時代の大半をニュージーランドで過ごした経験から、ニュージーランドワインが大好き。現在1歳になる長男と0歳の長女の子育てに奮闘中。