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【初心者にまず知ってほしい】ナチュラル・ビオ・自然派・オーガニックワインの基礎知識

オーガニックワイン

今、巷を賑わす自然派ワイン。「ナチュラルワイン」や「オーガニックワイン」、「無添加ワイン」等、自然に寄り添うワインが、そこここで手に入るようになりました。 世界中の人気を集めるブルゴーニュワインの高騰が止まらないフランスでも、それに台頭するかのように、今やナチュラル系ワインが主流のひとつ。

試行錯誤を繰り返す生産者の真摯な志は、世界中で留まる所を知りません。 人にも地球にもやさしい味わいは、自由で伸びやか。 すでに自然派ワインの虜になってしまった方も、ちょっと興味のある方も、文字通り“自然体”なワインの世界、ちょっと覗いてみませんか?

そもそもナチュラルワインやビオワイン、オーガニックワインとは?

オーガニックワイン

ナチュラルワイン、ビオ、オーガニック等、さまざまな名前で呼ばれる自然派ワインですが、すべて同じようなイメージを持たれている方も多いのではないでしょうか。 ここではまず自然派ワインの代表的なカテゴリーとして、「ナチュラルワイン」、「ビオワイン」、「オーガニックワイン」の3つに分けて見てみましょう。

自然派ワインのカテゴリー①ナチュラルワイン

ナチュラルワイン=自然のワイン。一般的には有機栽培のぶどうを原料に天然酵母で醸造。亜硫酸等の添加物を極力抑え、濾過は行わない等、ぶどうの栽培からワインの醸造に至るまで、人為的なものを出来るだけ介入させずに自然である事を目指したワインと言えるでしょう。

ここで少々抽象的な説明になってしまったのは、ナチュラルワインの定義付けは難しく、どの程度ナチュラルであるかの判断は生産者の価値観に委ねられているといった曖昧な側面があるため。 なかなか型にはめる事が出来ないナチュラルワインの奥深さは、独自の認証制度が始まったのがほんの数年前という事からも垣間見られます。

自然派ワインのカテゴリー②ビオワイン

一般的にビオワインとは、ビオロジック農法とビオディナミ農法を使ったふたつのワインに分けられますが、ビオロジックbiologiqueとは「有機農法」のフランス語。詳しくは同じような概念を持つ有機農法「オーガニックワイン」の項目でご説明するとして、ここではビオディナミ農法のお話を。

ビオディナミBiodynamieとは、オーストラリアの研究者ルドルフ・シュタイナー博士が提唱した占星術や天文学的な要素を取り入れた有機農法で、「プレパラシオン」と呼ばれる独自の調合肥料を使用。 万物に備わる力を活かしてワインを醸す“究極の有機農法”と言われ、ロマネ・コンティをはじめ、錚々たる造り手が実践しています。 わかりやすいところだと、月の満ち欠け。生物の生命力が増大する満月の日は収穫には最適という事で、この日にボトリングをするワインや日本酒もお目見えしています。

自然派ワインのカテゴリー③オーガニックワイン

オーガニックという言葉はもうすっかりお馴染みの事と思いますが、オーガニックワインは化学農薬や除草剤、化学肥料等の添加物を使わない有機農法のぶどうで醸したワインの事。

その言葉の知名度から有機ワインの総称のように使われる事もありますが、基本的には法的に認められたものだけがこの名前を名乗る事が可能です。 肥料は有機肥料。農薬も硫酸銅と消石灰の混合液「ボルドー液」等、伝統的に使用されているものは認められ、他にも非常にストイックな厳しい規定を3年以上継続する事が出来た畑だけが、オーガニックワインを醸せる土壌と認められます。 醸造面での規則も決められていますが、ぶどうの有機栽培に重きを置いたのがオーガニックワインと言えるでしょう。

ちなみに、フランスで一番多く採用されていると言われるのが「リュット・レゾネLutte Raisonnée」と呼ばれる減農薬農法。オーガニック同様、有機農法を目指す理念に変わりはありませんが、病害虫被害が発生した時にだけ農薬等の使用が認められています。 英訳すると、こちらもお馴染みの「サステナブル」。無理せずに続けていく事が大事という考え方は、そういった意味でも人にやさしい農法と言えます。

酸化防止剤「亜硫酸」の量がポイント

このように自然派ワインの3つのカテゴリーの概要を見てきましたが、ポイントは添加物。近年、ナチュラルワイン、ビオワイン、オーガニックワインそれぞれが、酸化防止剤である亜硫酸使用量の上限を具体的な数値で発表。これで難しかった自然派ワインの定義がわかりやすくなったと言えるでしょう。 詳細は次の項目でお話するとして、ここでは亜硫酸とはなに?を簡単に。

亜硫酸とは、ワインの酸化や微生物による汚染を防ぐために使われる食品添加物。ワインの他にも、いろいろな食品に使用されています。 亜硫酸は悪酔いや頭痛、喘息の原因になりうるとも言われ、他にもワインが織りなす複雑な味わいを単調なものにしてしまうといった話が自然派ワイン人気を後押ししていますが、その一方でワインから摂取する程度の量では問題ないとする研究結果や高品質のワインを維持するためには必要であるという考え方も。

もともとわずかな量の亜硫酸は、発酵の過程で自然に発生するものですので、人にも地球にも優しい自然派ワインの“自然体”、私達も優しい目で見てあげられたらいいですね。

認証マークで自然派ワインを探そう!

続いては、カテゴリー別に自然派ワインの認証制度と認証マークをご紹介します。 ここ数年で内容の異なる認証制度がいくつも登場し、それぞれの基準をクリアしたワインだけがラベルに認証マークを表示出来るようになりました。

すべての自然派ワインがこういった認証マークを表示しているわけではありませんが、ワインを見つける目安になりますので、みなさんもぜひお店で探してみてくださいね!

【ナチュラルワインの認証制度】Vin Méthode Nature(ヴァン・メトード・ナチュール)

オーガニック認証マーク

「ヴァン・メトード・ナチュール」は2020年に発足したばかりのナチュラルワインの認証制度。それまではっきりとした定義を持てなかったナチュラルワインに法的な基準を定め、格付けでお馴染みのAOCを管理するINAO(国立原産地名称研究所)やフランス農業省などがこの認証を試験的に認め、スタートしました。

ヨーロッパのみの適用のため英語の「ナチュラルワイン」は使わず、「ヴァン・メトード・ナチュール」という名前に統一されています。 手摘みで収穫した100%有機認証ぶどうのベースワインを野生酵母のみで醸造。ぶどうの品質への加工禁止。フィルター濾過などの高度な人為的処理を施さない等、醸造面におけるまで厳格な条件を掲げており、先でお話した亜硫酸の量の規定は2種類。

無添加の場合は左の認証マークを、30mgまでの添加は右の認証マークをラベルに貼る事が出来ます。 明確な定義がなかった頃のナチュラルワイン生産者はオーガニックワインの認証制度を一つの指針にしていたと聞いたことがありますが、この「ヴァン・メトード・ナチュール」、亜硫酸の使用量ひとつを取ってみても、それを上回る厳しい認証制度と言えるでしょう。

【ビオワインの認証制度】①DEMETER(デメテール/デメター)

オーガニック認証マーク

ドイツのオーガニック認証機関が発足させたビオディナミ農法の認証制度「デメテール(デメター)」。 世界有数の厳格さを誇り、生産者の一種のステータスとも言われています。 亜硫酸の量はオーガニックワインよりも厳しく定められており、無添加も

【ビオワインの認証制度】②Biodyvin(ビオディヴァン)

オーガニック認証マーク

ビオディナミ農法を実践する農家によって設立された組合が認める認証制度「ビオディヴァン」。 小規模な団体ですが、組合には有名な生産者も名を連ねる実力派。 亜硫酸の許容量は赤ワインで80 mg/L、白ワインで105 mg/Lと定められています。

【オーガニックワインの認証制度】①Euro Leaf(ユーロリーフ)

オーガニック認証マーク

EUで定められている有機栽培基準認証制度「ユーロリーフ」。2012年にリニューアルした規定では、原料のぶどうからワインの醸造に至るまで範囲を広げ、それに伴った新しい基準も制定されました。 亜硫酸の使用量は、赤ワインでは上限100mg/L、白とロゼは150mg/Lと、通常よりも30~50 mg/L低く定められています。 ぶどうの栽培から醸造までの工程に厳しい基準があり、取得するためには有機農法3年以上の 実績が必要

【オーガニックワインの認証制度】②AB(Agriculture Biologiqueアグリカルチャー・ビオロジック)

オーガニック認証マーク

「有機農法」のフランス語「Agriculture Biologique」の略語を冠した有機農法認証制度「AB」。1981年にフランス政府が設立しました。 基準には上記の「ユーロリーフ」との共通点も多くみられますが、国が管理する厳しい認証機関として世界的にも有名。1年ごとに抜き打ち検査が行われると言われています。

スーパーで見かける「無添加ワイン」ってなに?

それではここで「無添加ワイン」についても簡単にお話しましょう。 たくさんの造り手が精魂を傾ける “無添加”をリーズナブルな価格で実現させ、スーパーやコンビニで手軽に手に取る事が出来る「無添加ワイン」とは、どんなワインなのでしょうか?自然派ワインなのでしょうか?

結論からお話すれば、無添加ワインとは亜硫酸の代わりになる“何か”を加えたワイン。例えば「加熱処理」。ワインを含めた「醸造酒」は殺菌と酸化防止のための加熱処理が施される事があり、日本酒だと「火入れ」、ビールでは「熱処理ビール」、ワインではフランスの学者パスツールが考案した「パスツリゼーション」と呼ばれる低温殺菌法が有名です。

ワイン本来のフレッシュで繊細な味わいを残すために行わないという生産者も多い加熱処理ですが、これなら亜硫酸の代わりに熱を加える事で亜硫酸無添加のワインを造る事が可能です。 また、無添加ワインの原料には外国から輸入された濃縮還元果汁を加えている事が多く、これもたくさんのコストと労働力を費やしてぶどうを栽培するよりもリーズナブルに大量のワインを市場に送り出す事が出来ます。 人為的な処理を加えた「無添加ワイン」は、自然である事をストイックに目指す自然派ワインとは、ある意味、対極にあるワインと言えるでしょう。

2. 初心者でもナチュラルワインは楽しめる?味に違いはあるの?

オーガニックワイン

知識的な話が続いたところで、さぁ、いよいよ実践編!ナチュラルワインの魅力を「外観」、「香り」、「味わい」の3つに分けて、ご案内します。

ナチュラルワインの特徴は?今まで飲みなれてきたワインとナチュラルワインの違いとは? グラスに注がれた美味しそうなワインを想像しながらご覧ください。

ナチュラルワインの特徴①外観

ナチュラルワインの見た目の特徴と言えば、澱やにごり。フィルター等による濾過が認められていないため、ワインによっては少々とろりとしたにごりと共にボトルの中で澱が舞うのが見えます。

また、ボトルの中で発酵が継続されている事もあり、ピチピチッとわずかに弾けるフレッシュな口当たりもナチュラルワインならでは。そんなワインは抜栓時に噴き出す事もありますので、少々ご注意を。

ナチュラルワインの特徴②香り

ナチュラルワインは「ビオ臭」と呼ばれる独特な香りを放つ事があります。その原因はワインが出来る限り酸化を防ごうとする時に生まれる還元臭等と言われていますが、ゆで卵やお漬物のような、人によっては馬小屋のような匂いと言う方もいて、牧場の近くを通りかかった時、なるほど!と腑に落ちた記憶があります。

ナチュラルワインですから自然界の匂いがするのも当然と言えば当然なのですが、近頃はずいぶんと減ったようです。この間私が飲んだナチュラルワインは、蜂蜜入りのヨーグルトにレモンピューレをトッピングしたような、そんな美味しい香りでした。

ナチュラルワインの特徴③味わい

ナチュラルワインの味わいを一言で表現すれば、素朴で表情豊か。身体の中に溶け込んでいくような飽きの来ない飲み心地と、すみずみにまで広がるソフトで奥行きのあるみずみずしさは、スムージーを彷彿させるようなクセになるお味。添加物を極力抑えた味わいは、身体にも心にもやさしい滋味深さも感じるワインを醸し出します。

タフでワイルドな野生酵母の力

そんなナチュラルワインの味わいは手間暇を惜しまない丁寧な醸造過程の賜物ですが、ポイントのひとつが「野生酵母」。野生酵母とは、日本で言う天然酵母の事。ぶどうを栽培する土地ごとに住み着いているものや、ぶどうの果皮に付着しているもの等自然界から採取されたさまざまな酵母が生存競争に勝ち残りワインを醸す、文字通りワイルドな酵母です。

ワインを醸す酵母には野生酵母の他に「培養酵母」というものがあり、これは言わば酵母の優等生。醸造に最もふさわしい酵母を野生酵母から選び抜き、培養と選別を繰り返した安定性のある酵母と言えますが、醸されるワインの味わいは野生酵母に比べて画一化されてしまうという声もあり、ナチュラルワインのワクワクするような味わいにはまってしまった方々、そして造り手側にも面白みに欠けるという事があるのかもしれません、ナチュラルワインには野生酵母のみが認められています

3. ナチュラルワインの相場や購入方法

オーガニックワイン

続いては、ナチュラルワインを早速飲んでみたくなった方々に、お値段や購入方法等、具体的な情報をお届けします。自然派ワイン全般にも共通していますので、どうぞお役立てください。

ナチュラルワインはお高い?気になるお値段は?

通常のワイン以上に環境変化に左右されながらぶどうを栽培し、その上、さまざまなコストをかけて醸されるナチュラルワインですから、当然お値段も割高。そんなイメージを持たれている方も多いと思いますが、実際は通常のワインと驚くほどの違いはないと言った印象です。例えば、この間見かけたヴァン・メトード・ナチュール認証を取得しているフランス、アルザス地方のワインは3000円代。実際にはまだ飲んでませんが、ふさわしい値段だなと感じました。

私がアドバイザーをしているワインブティックにも自然派ワインが並んでいますが、1000円台のものからラインナップされていて、高い!と思った記憶はあまりありません。もちろん高価なものはありますが、それは通常のワインでも同じ事。 売り手側も、購入者も、ワイン自体の美味しさはもちろん、生産者の志やその背景にあるドラマ、ストーリー性を自然派ワインの魅力として捉えているのを実感する毎日です。

購入方法は?スーパーでも買えるの?

店頭に並ぶ事も多くなった自然派ワインですが、ガレージワインと呼ばれるような小規模生産者のものやレアなものも多く、そういったワインはインターネットの通販サイトがおすすめです。最近は豊富なラインナップを取り揃えているサイトが本当に多くなりました。ワイナリーのHPでは直売ワインに出会えるところも。 流通に力を持つ大手メーカーが自然派ワインにも力を入れている事から、リーズナブルでどなたにでも親しみやすいものをスーパーで見つける事も可能。今夜の夕食のお供に、飲みたくなったらすぐ手に入るのが嬉しいですね。

ちなみにこれからの季節のおすすめは、自然派白ワインと鮎のペアリング。すだちをギュッと絞った焼き鮎はもちろんですが、じっくりとコンフィした鮎をパリッと焼き上げ、きゅうりの入ったサラダとメロンを添えて。旬の鮎から生まれる瓜のニュアンスとみずみずしいメロン、シャキシャキきゅうりの“ウリ科”ハーモニーは、じわじわと美味しさがやって来るジューシーな自然派ワインとぴったりです。 

ナチュラルワインを購入するにあたっての注意点

認証マークのないワインが自然派かどうかを見分けるには?

これまでもお話したように、自然派の認証を受けた生産者は、認証マークをラベルに表示する事が出来ます。しかし、自分の目指すべきワインを求めて、あえて認証を取らないワイナリーも。 そんなワインがナチュラルなワインかどうかを見分ける方法としては、澱やにごりを見つける事。

また裏側のラベルに酸化防止剤についてのメッセージが表記されている場合もありますので、ボトルを注意深くチェックしてみてください。

長持ちするナチュラルワインを選ぶには?

デリケートで移ろいやすいナチュラルワインをなるべく長い間保存しておきたい場合は、タンニンが多く含まれているぶどう品種のワインを選んでみるといいかもしれません。例えば、カベルネ・ソーヴィニヨンやグルナッシュ等フルボディの赤ワインを醸せるぶどう品種がおすすめですが、白ぶどうならピノ・グリ等、ほんのりとピンク色をした果皮のぶどうを選ぶといいでしょう。

また全房発酵のワインも要チェック。「全房発酵」とはぶどうをまるごと使った醸造方法で、普通の白ワインでは取り除く茎や種子等に含まれているタンニンが長期保存のポテンシャルを秘めたワインを醸し出します。苦みのあるワインにも成りえる事から、醸造の難しさには定評がある全房発酵ですが、今、その繊細でなめらかな味わいに魅了された自然派生産者が続々と登場中。ピノ・ノワールやガメイ等渋みの少ないぶどう品種に使われる事が多い醸造法ですので、ぜひ探してみてくださいね。

まとめ

オーガニックワイン

地球温暖化や気候変動等、ワインにも厳しい環境が続く昨今ですが、そのありのままを受け入れ自然のリズムに寄り添いつつも開拓していこうとする自然派ワインの美味しさは、生産者の真摯な姿勢そのものです。

以前、ワインの香りの勉強も兼ねて調香をした事があるのですが、合成香料を組み立てたものに天然香料をほんの一滴加えただけでガラリと香りが変わった時の衝撃を今でも覚えています。 そんな大いなる大自然のパワーを取り入れて、強く、しなやかに進化を遂げる自然派ワインにこれからも目が離せません。

Yuko Imai

日本ソムリエ協会認定J.S.Aワインアドバイザー兼日本酒サービス研究会認定唎酒師。ボーダレスなお酒の楽しみ方を見つけると心躍る毎日。冒険の旅の行く先をいつも探しています。
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